2006年5月アーカイブ

監査制度の信頼回復の好機!

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金融庁は5月10日、カネボウの粉飾決算に関与していた中央青山監査法人に対し業務の一部停止命令を出しました。内容は、上場企業などに義務付けられている法定監査を7月1日から8月31日の2ヶ月間停止する極めて重い処分でした。この極めて重い処分の意味を渦中にいる会計士の方々は全く理解していないのではないかと懸念しています。処分が施行される時期が監査の繁忙期でないゆえ重い処分の意味を中央青山の延命策とそれらの人々は誤解しているのではないか推測します。次の二つの記事がその誤解を端的に現していると思われます。
「公認会計士協会は中央青山監査法人に行政処分が下ったことを受けて、混乱を避けるため、企業向けに情報を提供する窓口を十一日に設置する。中央青山の監査先企業は一時監査人の選任が必要になってくる場合もあるため、他の監査法人の情報などを提供する。会員に対しては中央青山の顧客企業への売り込みや、会計士の引き抜きなどが横行しないよう注意喚起する。(2006/05/11, 日本経済新聞 朝刊)」
「中央青山、トーマツ、新日本、あずさの四大監査法人以外の監査法人を育成することも欠かせないと会計問題に詳しい自民党議員はいう。中央青山と提携関係にあるプライスウォーターハウスクーパースが新しい監査法人を設立しようとしている。会計士の引き抜きをすべきではないと中央青山側は抵抗しており、道は平坦ではない。(2006/05/18, 日本経済新聞 夕刊)」

議論を整理するために、監査法人で留意すべき点を述べます。監査法人は、公認会計士法に基づき設立された法人で、5人以上の公認会計士を社員(法人持分を所有する業務執行役員のこと、一般的にはパートナーと呼ばれている)が必要となります。監査法人の負う債務に対して無限連帯責任をその社員は負っています。中央青山の会計士は2,000名余りおりますが、その大部分は、単なる従業員でパートナーではありません。少数のパートナーと大多数のその他の会計士を峻別して中央青山問題は議論すべきです。

カネボウの粉飾のみならず、山一証券、足利銀行の監査においても、監査法人としての多くの善管注意義務違反があった中央青山の自己改革は遅々として進みませんでした。不正防止を徹底するには会計士による自主規制だけでは不十分であると金融庁が判断を下した結果が今回の重い処分の意味と思料します。

会計及び監査の信頼性回復のためは、中央青山の解散は必要です。禊なしに信頼を回復する術はないと思料します。そのためには、パートナーは中央青山の負う債務に対して無限連帯責任を遂行すべきです。また、中央青山のクライアントに対する監査業務の中断を避ける施策も必要です。そのためにも、トーマツ、新日本、あずさ、あるいはプライスウォーターハウスクーパースが設立を考えている新監査法人、更には四大監査法人以外の中小監査法人も、パートナー以外の中央青山の会計士を積極的に採用すべきです。既にその動きが見えます。「中央青山の所属会計士300名がプライスウォーターハウスクーパースが日本で設立する監査法人に移籍(2006/05/25, 日本経済新聞 朝刊)」

監査の信頼性回復には有能な会計士を再教育し、筋肉質の監査法人に再編することが必要です。今がそのチャンスです。

益金

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益金とは、資本取引(新株の発行、転換社債の株式への転換、減資等)以外の取引により、法人の純資産を増加させる一切の収益をいいます。資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡、有償又は無償による役務の提供、無償による資産の譲受け、その他の取引で資本等取引以外のものに係わる収益が益金に該当します。法人税法上、当該益金を規定した条文が法22?と法22?です。当該条文を引用します。

法22?「内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。」

法22?「第二項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする。」

法22?を読んだ時、二つの点に留意する必要があります。ひとつは「別段の定めがあるものを除き」の文言です。もうひとつは「無償による種々の取引とその他の取引」の意味です。別段の定めがあるとは、別の条文に他の取扱いが定められていると言う意味です。法22?の「別段の定めがあるものを除き」は、益金不算入を意味しています。別段の定めがある主なものに受取配当金の益金不算入(法23)、資産の評価益の益金不算入(法25)、還付金等の益金不算入((法26)があります。もうひとつの「無償による種々の取引とその他の取引」は問題の多い取扱いです。当該取引の収益認識時点の要件が現在のところ確立していません。最近最高裁判決がでた旺文社事件は、無償による取引の取扱いについて納税者と課税庁が争った事件ですが、判決文を読む限り、当該取引の収益認識のための要件は何かに踏み込まないまま判断が下されたと思料いたします。「無償による種々の取引とその他の取引」は今後も税務訴訟の主たる争点のひとつとなるでしょう。

法22?では公正妥当な会計処理の基準が述べられています。特に実務上注意すべき点として、企業会計原則に従った会計処理によって認識された収益は、法人税法法22?でいう公正妥当な会計処理の基準と必ずしも一致しない可能性があります。公正妥当な会計処理の基準は大事な概念ですので、別の機会に議論したいと考えています。

生命(いのち)は温かい

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私のブログを読んでいる友人から、「村田さんのブログは、ブレーキとかハンドルにあそびのない車みたいですね!」との意見が寄せられました。ブログに専門性を持たせるため、敢えて、あそびを入れなかったことは事実です。あそびのないブログは、潤いがありません。読者にとっても、たまには肩の力を抜いた記事が息抜きとして必要でしょう。そこで、今日は税と関係ない話です。
動物園を題材にしたTVの番組の中で、飼育係を演じている俳優の台詞「私が飼育係として、動物を飼育していると本当に"生命(いのち)は温かい"ということが実感できます。だから、私は・・・」が妙に心に響きました。"生命(いのち)は温かい"という至極簡単なことを実感することを、我々はもっともっと体験すべきではないかとTV番組を見ながら強く感じました。"生命(いのち)は大切に!"と言う言葉は誰もが何百回も聞いていますが、"生命(いのち)は温かい"を経験した人はどれだけの人がいるのかなと不安になりました。我々家族の一員に体重12kgの桃太郎と言う名前の犬がいます。その"モモ"が甘えて、時々私にダッコをおねだりします。ダッコするとフサフサした毛に覆われた彼は本当に温かいのです。そんな温かいという感触は、毎日散歩に連れていくだけでは、餌を朝夕二回定期的に与えるだけでは得られません。普段の対人関係も「俺はやるべき事はやっている」と自分を正当化していますが、実は犬を散歩に連れていくだけ、餌を朝夕二回定期的に与えるだけと五十歩百歩かもしれません。温もりは体感しないと感じられないものです。最愛の人の手を触れてみてください。きっと温もりを感じることでしょう。"生命(いのち)は温かい"ということが実感できるでしょう。

非上場株式の低廉譲渡と新株の有利発行における時価を算定するにあたって、その会社の所有する資産の含み益に対して将来発生する法人税額等相当額を控除出来るか否かが争われた事件を取り上げます。この事件の最高裁判決(昨年11月)は納税者の勝訴、つまり当該時価を算定するにあたって法人税額等相当額を控除することが認められた事件です。

今回の判例解釈を通達の運用という観点から述べてみます。相続においての評価通達では、非上場株式の時価を算定するにあたって、その会社の所有する資産の含み益に対して将来発生する法人税額等相当額を控除出来ることが明記されています。当該評価通達を所得税の計算において利用したことが更正の理由となり、この更正の理由が争点となった事件でした。一般的に合理性があるとして実務で定着していた取扱い(法人税額等相当額を控除)を、原処分庁は、評価通達が対象とする相続税とは税目が異なることを理由に更正しました。この争点に対して最高裁が判断を下したのが今回の判決です。ここで留意すべき点として、平成12年に改正された法人税、所得税の基本通達があります。平成12年基本通達では、非上場会社の株式の時価を算定するにあたって、会社の所有する資産の含み益に対して将来発生する法人税額等相当額を控除することを認めていません。本事案が平成12年基本通達以前の取引に係わるので、これから同様な取引を行う場合、法人税額等相当額を控除した時価は認められないとの評釈記事がありますが、これは租税法律主義を理解した人の書いた評釈とは思えません。今回の判決は平成12年基本通達の適否に判断を下していないだけで、平成12年基本通達を裁判所が認めた訳ではありません。

時価とは社会通念上相当と認められる価額であって、法人税法を例にとれば、時価算定方法を法定していません。社会通念上合理的である価額である限り、納税者の算定した価額を時価と認めるべきです。通達は前回の租税法解説の法源で議論した通り、租税法律主義の下における法源を構成していません。しかしながら、課税当局は俗にいう通達行政で事案を進めようとします。つまり、平成12年基本通達を錦の御旗にして、平成12年基本通達と異なる方法で時価を算定した納税者の非上場株式の価額は、有利発行(平成12年基本通達で算定された価額と納税者の算定した価額の差)したとして課税するでしょう。課税の蓋然性を恐れて、納税者が真の時価とは異なる平成12年基本通達価額を使用している事態が散見される現状を筆者は懸念しております。あるべき通達行政に関して含蓄ある内容の文章が本ブログにコメントされた投稿者の中にありましたので引用させてもらいます。
「法人税基本通達の制定について」(法人税法基本通達の前文)では、次のように記されております。「この通達の具体的な運用に当たっては、法令の規定の趣旨、制度の背景のみならず条理、社会通念をも勘案しつつ、個々の具体的事案に妥当する処理を図るように努められたい。いやしくも、通達の規定中の部分的字句について形式的解釈に固執し、全体の趣旨から逸脱した運用を行ったり、通達中に例示がないとか通達に規定されていないとかの理由だけで法令の規定の趣旨や社会通念等に即しない解釈におちいったりすることのないように留意されたい」の部分を引用させてもらいました。


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