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非上場株式の低廉譲渡と新株の有利発行における時価

非上場株式の低廉譲渡と新株の有利発行における時価を算定するにあたって、その会社の所有する資産の含み益に対して将来発生する法人税額等相当額を控除出来るか否かが争われた事件を取り上げます。この事件の最高裁判決(昨年11月)は納税者の勝訴、つまり当該時価を算定するにあたって法人税額等相当額を控除することが認められた事件です。

今回の判例解釈を通達の運用という観点から述べてみます。相続においての評価通達では、非上場株式の時価を算定するにあたって、その会社の所有する資産の含み益に対して将来発生する法人税額等相当額を控除出来ることが明記されています。当該評価通達を所得税の計算において利用したことが更正の理由となり、この更正の理由が争点となった事件でした。一般的に合理性があるとして実務で定着していた取扱い(法人税額等相当額を控除)を、原処分庁は、評価通達が対象とする相続税とは税目が異なることを理由に更正しました。この争点に対して最高裁が判断を下したのが今回の判決です。ここで留意すべき点として、平成12年に改正された法人税、所得税の基本通達があります。平成12年基本通達では、非上場会社の株式の時価を算定するにあたって、会社の所有する資産の含み益に対して将来発生する法人税額等相当額を控除することを認めていません。本事案が平成12年基本通達以前の取引に係わるので、これから同様な取引を行う場合、法人税額等相当額を控除した時価は認められないとの評釈記事がありますが、これは租税法律主義を理解した人の書いた評釈とは思えません。今回の判決は平成12年基本通達の適否に判断を下していないだけで、平成12年基本通達を裁判所が認めた訳ではありません。

時価とは社会通念上相当と認められる価額であって、法人税法を例にとれば、時価算定方法を法定していません。社会通念上合理的である価額である限り、納税者の算定した価額を時価と認めるべきです。通達は前回の租税法解説の法源で議論した通り、租税法律主義の下における法源を構成していません。しかしながら、課税当局は俗にいう通達行政で事案を進めようとします。つまり、平成12年基本通達を錦の御旗にして、平成12年基本通達と異なる方法で時価を算定した納税者の非上場株式の価額は、有利発行(平成12年基本通達で算定された価額と納税者の算定した価額の差)したとして課税するでしょう。課税の蓋然性を恐れて、納税者が真の時価とは異なる平成12年基本通達価額を使用している事態が散見される現状を筆者は懸念しております。あるべき通達行政に関して含蓄ある内容の文章が本ブログにコメントされた投稿者の中にありましたので引用させてもらいます。
「法人税基本通達の制定について」(法人税法基本通達の前文)では、次のように記されております。「この通達の具体的な運用に当たっては、法令の規定の趣旨、制度の背景のみならず条理、社会通念をも勘案しつつ、個々の具体的事案に妥当する処理を図るように努められたい。いやしくも、通達の規定中の部分的字句について形式的解釈に固執し、全体の趣旨から逸脱した運用を行ったり、通達中に例示がないとか通達に規定されていないとかの理由だけで法令の規定の趣旨や社会通念等に即しない解釈におちいったりすることのないように留意されたい」の部分を引用させてもらいました。


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