2006年8月アーカイブ

実質課税の原則

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実質課税の原則は、税法の解釈・適用に当たって常に留意を要する原則です。名義株の課税上の取扱いが古典的実質課税の取扱いと考えられます。名義株の配当所得の帰属は名義人でなく、真の所有者に帰属することを法人税法上および所得税法上定めています。これを実質所得者課税の原則と呼んでいます。 当該条文を引用します。

法11「資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の法人がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する法人に帰属するものとして、この法律の規定を適用する」
所12「資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であって、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。」

経済取引がグローバル化され、複雑になるにつれて税法の解釈に齟齬が納税者と課税庁の間に見られるようになります。そこで、「実質課税の原則とは何か」がグローバル取引では多く問われるようになります。近年、話題となる税務訴訟は多かれ少なかれ実質課税の原則が争点となっています。種々の租税法の文献で述べている実質課税の原則を集約すると以下の4つになると思います。
(1)上述の実質所得者に課税する
(2)契約書の法形式、および契約書に認められている文言に拘らず、経済的実質に対して課税する
(3)税法の解釈を文理解釈でなく、論理解釈も行った上で課税する
(4)租税負担回避のために不自然不合理な行為がなされた場合、これを否認し、通常とられるであろう行為を以って課税する

上記(2)?(4)に対して付言します。先ず上記(3)に関して、課税庁は税法の論理解釈を無視する傾向があります。移転価格税制(措置66の4)の本質は、国外関連者との取引は独立企業間価格で行うことにあると思料します(論理解釈)。しかし、措置66の4の書き振り「・・支払いを受ける対価の額が独立企業間価格に満たないときは・・独立企業間価格で行われたものとみなす」(文理解釈)を盾に、逆のケースを認めません。しかし、ビジネスは生き物です。ある年は厳しくても、翌年は価格が改善されることがあります。たとえ、翌年、輸出価格が改善されても(支払いを受ける対価の額が独立企業間価格を超える)、前年課税した税金を還付することはしません。移転価格税制の分野では、税法の解釈を文理解釈でなく、論理解釈も行った上で課税するという実質課税の原則が無視されていると言わざるを得ません。次に、上記(2)と(4)は、課税庁にとって好ましくない取引を課税するための都合の良い論理に利用されています。租税法律主義の見地から考えれば、上記(2)と(4)の適用は、出来るだけ狭義に解して運用すべきであるのに、現実は当該実質課税の原則を課税庁は広義に解しております。このような事態は大変由々しいことです。あるべき実質課税の原則確立のためには、訴訟の場で争う必要があるようです。

投稿者こばやし(しん)さん、わたなべさん、だるまちゃんのコメントも面白いです。是非、読んで下さい。また、本ブログの読者のひとりがインターネットで見つけたある話を連絡してくれました。以下がその内容です。
ある新聞社が、「お金」についての定義コンテストを企画し、最高の定義に対して賞金を出すと発表し、そして優勝した定義は「お金とは、天国以外のすべてに通じる万国共通のパスポートであり、幸福以外のすべてを与えてくれる万国共通のプロバイダーである」だそうです。「お金があっても幸せになれない」というかなり厳しい現実を定義は反映しているようです。それでは、このブログで「幸せ」についての最高の定義コンテストしましょうか?

がんばれ日本人

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朝日新聞(2006/07/19?24に掲載された連載記事)の「分裂にっぽん」の記事を読むと、日本人であることが恥ずかしい気持ちにさせられます。「分裂にっぽん-その1」の冒頭は次のような文章で始まります。「税金を極力払わないですむよう(税金の安い)国を渡り歩く『永遠の旅人』になって、この町で迎える6度目の夏だ。-中略ーここは毎年6月から8月末まで。いったん帰国し、寒くなる12月からハワイで暮らす(日本での滞在日数を183日を超えないようにすると、日本で所得税を払う必要はないとの理解に基づく)」。ITと新興企業の株式公開であぶく銭を得た新富裕層と呼ばれる人々の中には、日本で税金を払わないためなら脱税も厭わないという話が延々と続きます。更に驚いたことに、その記事では、「今、日本には100万ドル(1億17百万円)以上の金融資産を持つ人は140万人居ります」と紹介されています。単純に人口比で換算すると日本人の約100人に1人は億万長者であると言うことです。”本当かいな・・・”が多くの読者の感想ではないかと思います。

話を本題に戻します。「分裂にっぽん」の記事は、我々多くの日本人が失っている部分を浮き彫りにしてくれます。20年余り前になりますが、米国に7年駐在する機会がありました。米国駐在して大きな驚きは、運良く富を得た人はその手にした富の使い方の美学を持っていたことです。世界第一位の金持であるビル・ゲイツ氏が妻と共同で運営する慈善財団へ世界第二位の金持であるウォーレン・バフェット氏が自分の財産を寄付するというニュースが最近ありました。新聞報道によれば、「人々が最も得意とする分野で、できるだけ長く働けば個人資産を膨らませることができる。そうすれば寄付を通じて社会へ還元する金額も増える。結果として、社会全体が富む」とバフェット氏は考え、金儲けをしてきたそうです。このような美学を、程度の差こそあれ、米国での成功者は皆持っておりました。その事を学んだのが私の米国駐在でした。

今の日本には、運良く富を得た人が140万人も居ます。「俺は血の出るような努力をして今の富を得たのだ!運良く富を得たなんてふざけたことを言うな」と”運良く富を得た”という表現に違和感を覚える人も居ると推察します。しかし、いくら努力しても報われない人も沢山居ます。その現実を考えると、私は”運良く富を得た”が適切なように思います。成功は、自分の努力に加えて、時の運、他者の協力、あるいは他者の犠牲によって成しうるものです。それを考えると成功に対して謙虚になることが出来ます。謙虚な気持ちを持つことで、手にした富の使い方の美学が生まれてくると思います。もう一つ大事なことは、日本人の約100人の内、99人は金運に見放されていますが、多くの人は普通の生活が出来ます。しかし、ごく僅かと推測しますが、普通の生活の出来ない弱者も居ます。そのような弱者を救うのは、国だけではありません。運良く富を得た人は、弱者に優しい社会を作る重要な担い手と考えます。

がんばれ金持日本人!せこいことはするな!

租研セミナー

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日本租税研究協会の会員懇談会で講師を務めることとなりました。本懇談会は、租研の法人会員、個人会員の方が参加出来ます。本懇談会は下記により開催されます。

日時: 8月29日(火曜) 午後1時30分から3時まで
場所: 日本工業倶楽部 4階第4会議室
     (千代田区丸の内1?4?6)
議題: 來料加工取引に対する課税上の問題点
講師: 公認会計士・税理士
     村田守弘

取り急ぎ、連絡します。

超高齢化社会ー人材投資促進税制

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高齢化に対する税制の手当の一部として2005年4月1日から導入された「人材投資促進税制」があります。当該税制は経済産業省が音頭をとって導入されたものです。しかし、留意すべきは、当該税制が高齢化に対する税制の手当の側面より、我が国の競争力を高める側面が強いです。経済産業省は、「すぐに利益につながらない中長期的な投資である教育訓練費を、戦略的に拡大させることは日本の重要課題であり、研修費用の給与総額に対する割合が欧米の2分の1、中国の5分の1に落ち込んでおり、政策として企業内人材育成を促進することが急務である」と言っています。更に、「団塊世代の定年到達や若者人口の急減が迫る中、企業の人材空洞化が懸念されています。こうした経営課題を踏まえ、企業が場当たり的な教育ではなく、経営戦略の一環として従業員教育をした場合には、減税をして支援をしようというものです。業種・規模を問わず全ての企業が対象となり、更には中小企業に対しての手厚い特別措置があります。研修委託費・教材開発費など幅広い費用が対象となりますので、積極的にご活用下さい」と経済産業省は言っております。

この制度を定年到達後の団塊世代に対する生涯教育・教育費に利用すれば、高齢化に対する税制の手当となります。経済産業省の資料から制度の概要を説明します。

1. 適用事業者
青色申告書を提出する法人又は個人事業者
2. 適用事業年度
平成17年4月1日から平成20年3月31日までの間に開始される事業年度(個人事業者は平成18?20年分の所得に係る申告)
3. 基本制度
○教育訓練費用を前2事業年度の平均額(基準額)より増加させた法人又は個人事業者が対象
○増加額の25%に相当する金額を当期の法人税額(個人事業者は所得税額)から控除
○控除額は法人税額の10%が上限となり翌年度には繰り越せない
4. 中小企業の特例措置
○基本制度に代えて選択可能(基準額・対象条件・控除額上限は同じ)
○総額に対し増加率の1/2に相当する税額控除率(20%上限)を乗じた金額を当期の税額から控除
○地方税(法人住民税)も減額 (課税標準を法人税額控除後の額とする)
5. 教育訓練の対象者
○自社の使用人又は個人事業者のその事業に係る使用人
6. 対象となる教育訓練費
○外部講師謝金...社外講師・指導員に支払う講師料・指導料等
○外部施設等使用料...研修を行うために使用する外部施設・設備の借上料、利用料
○教育訓練委託費...講師、教材等を含め研修の一部又は全体を外部教育機関等へ委託する場合の費用
○外部研修参加費...社員を外部の研修プログラムに参加させる場合の受講料等
○教科書その他の教材費...研修用の教材・プログラムの購入費等

教育訓練費に25百万円費やした中小企業はその金額の20%、5百万円の税の節約が出来る可能性があります。残念ながら、人材投資促進税制のメリットはあまり知られておりません。積極的に利用することを勧めます。もう一つ重要なことは、会計帳簿の整備です。当該税務メリットを最大限享受するには、支出した費目を当該税制に沿った教育訓練費にまとめられるよう会計帳簿を整備することが肝要となります。

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