実質課税の原則
実質課税の原則は、税法の解釈・適用に当たって常に留意を要する原則です。名義株の課税上の取扱いが古典的実質課税の取扱いと考えられます。名義株の配当所得の帰属は名義人でなく、真の所有者に帰属することを法人税法上および所得税法上定めています。これを実質所得者課税の原則と呼んでいます。 当該条文を引用します。
法11「資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の法人がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する法人に帰属するものとして、この法律の規定を適用する」
所12「資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であって、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。」
経済取引がグローバル化され、複雑になるにつれて税法の解釈に齟齬が納税者と課税庁の間に見られるようになります。そこで、「実質課税の原則とは何か」がグローバル取引では多く問われるようになります。近年、話題となる税務訴訟は多かれ少なかれ実質課税の原則が争点となっています。種々の租税法の文献で述べている実質課税の原則を集約すると以下の4つになると思います。
(1)上述の実質所得者に課税する
(2)契約書の法形式、および契約書に認められている文言に拘らず、経済的実質に対して課税する
(3)税法の解釈を文理解釈でなく、論理解釈も行った上で課税する
(4)租税負担回避のために不自然不合理な行為がなされた場合、これを否認し、通常とられるであろう行為を以って課税する
上記(2)?(4)に対して付言します。先ず上記(3)に関して、課税庁は税法の論理解釈を無視する傾向があります。移転価格税制(措置66の4)の本質は、国外関連者との取引は独立企業間価格で行うことにあると思料します(論理解釈)。しかし、措置66の4の書き振り「・・支払いを受ける対価の額が独立企業間価格に満たないときは・・独立企業間価格で行われたものとみなす」(文理解釈)を盾に、逆のケースを認めません。しかし、ビジネスは生き物です。ある年は厳しくても、翌年は価格が改善されることがあります。たとえ、翌年、輸出価格が改善されても(支払いを受ける対価の額が独立企業間価格を超える)、前年課税した税金を還付することはしません。移転価格税制の分野では、税法の解釈を文理解釈でなく、論理解釈も行った上で課税するという実質課税の原則が無視されていると言わざるを得ません。次に、上記(2)と(4)は、課税庁にとって好ましくない取引を課税するための都合の良い論理に利用されています。租税法律主義の見地から考えれば、上記(2)と(4)の適用は、出来るだけ狭義に解して運用すべきであるのに、現実は当該実質課税の原則を課税庁は広義に解しております。このような事態は大変由々しいことです。あるべき実質課税の原則確立のためには、訴訟の場で争う必要があるようです。
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0020租税法解説0 TrackBacks
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まず、実質課税の原則の一例として名義株を挙げていますが、これは法律上誤りですので指摘します。
名義株の法律上の保有者は名義人ではなく、名義人の後ろに隠れている「真の保有者」です。これは租税法以前の会社法の問題です。そして、「真の保有者」が法律上の真正な株主ですから、配当は当然に「真の保有者」に帰属することになり、したがって「真の保有者」に配当所得が生じることになります。言い換えれば、ここでは「真の保有者」が誰であるかという会社法上の問題が存在するだけで、租税法上特別の問題は存在しません。つまり、「真の保有者」が課税を受けるのは法人税法11条や所得税法12条の働きによるものではありませんので、実質課税の原則の実例としては不適切です。
税務問題について訴訟で決着を付けるべきという点については、商売上も大賛成します。ただし、これまでのように税務調査での不可解な「交渉」及び不透明な修正申告で決着を付けるのではなく、裁判所の判決で決着を付けることが一般化したら、弁護士が儲かる一方、会計士、税理士の飯のネタが減るように思いますが(余計なお世話で済みません)、そんなことでいいのでしょうか?
「移転価格税制の分野では実質課税の原則が無視されていると言わざるを得ません。」という村田先生の意見におっしゃるとおりだと思いました。何故本来公僕であるはずの税務調査官が、質問検査権を盾に、江戸時代の悪代官のような態度で税務調査をするのでしょうか。今の移転価格税制の調査方法が改善されるよう願います。
おっしゃるとおりです。裁判所側としても、税務訴訟の事実認定の段階から、租税法律主義を意識するべきだと思います。すなわち、法律行為としての実態はあって仮装行為といえないのに、経済的実質がその法形式と異なるからという理由のみで事実を否認することにならないよう、こころしてとりかかるべきです。その意味で航空機リースの判決は評価でき、他方、映画フィルムリースの判決には疑問が残ります。