超高齢化社会ー人材投資促進税制
高齢化に対する税制の手当の一部として2005年4月1日から導入された「人材投資促進税制」があります。当該税制は経済産業省が音頭をとって導入されたものです。しかし、留意すべきは、当該税制が高齢化に対する税制の手当の側面より、我が国の競争力を高める側面が強いです。経済産業省は、「すぐに利益につながらない中長期的な投資である教育訓練費を、戦略的に拡大させることは日本の重要課題であり、研修費用の給与総額に対する割合が欧米の2分の1、中国の5分の1に落ち込んでおり、政策として企業内人材育成を促進することが急務である」と言っています。更に、「団塊世代の定年到達や若者人口の急減が迫る中、企業の人材空洞化が懸念されています。こうした経営課題を踏まえ、企業が場当たり的な教育ではなく、経営戦略の一環として従業員教育をした場合には、減税をして支援をしようというものです。業種・規模を問わず全ての企業が対象となり、更には中小企業に対しての手厚い特別措置があります。研修委託費・教材開発費など幅広い費用が対象となりますので、積極的にご活用下さい」と経済産業省は言っております。
この制度を定年到達後の団塊世代に対する生涯教育・教育費に利用すれば、高齢化に対する税制の手当となります。経済産業省の資料から制度の概要を説明します。
1. 適用事業者
青色申告書を提出する法人又は個人事業者
2. 適用事業年度
平成17年4月1日から平成20年3月31日までの間に開始される事業年度(個人事業者は平成18~20年分の所得に係る申告)
3. 基本制度
○教育訓練費用を前2事業年度の平均額(基準額)より増加させた法人又は個人事業者が対象
○増加額の25%に相当する金額を当期の法人税額(個人事業者は所得税額)から控除
○控除額は法人税額の10%が上限となり翌年度には繰り越せない
4. 中小企業の特例措置
○基本制度に代えて選択可能(基準額・対象条件・控除額上限は同じ)
○総額に対し増加率の1/2に相当する税額控除率(20%上限)を乗じた金額を当期の税額から控除
○地方税(法人住民税)も減額 (課税標準を法人税額控除後の額とする)
5. 教育訓練の対象者
○自社の使用人又は個人事業者のその事業に係る使用人
6. 対象となる教育訓練費
○外部講師謝金...社外講師・指導員に支払う講師料・指導料等
○外部施設等使用料...研修を行うために使用する外部施設・設備の借上料、利用料
○教育訓練委託費...講師、教材等を含め研修の一部又は全体を外部教育機関等へ委託する場合の費用
○外部研修参加費...社員を外部の研修プログラムに参加させる場合の受講料等
○教科書その他の教材費...研修用の教材・プログラムの購入費等
教育訓練費に25百万円費やした中小企業はその金額の20%、5百万円の税の節約が出来る可能性があります。残念ながら、人材投資促進税制のメリットはあまり知られておりません。積極的に利用することを勧めます。もう一つ重要なことは、会計帳簿の整備です。当該税務メリットを最大限享受するには、支出した費目を当該税制に沿った教育訓練費にまとめられるよう会計帳簿を整備することが肝要となります。
コメント
>以上の理由で結構使いにくい制度のように思います。
役人の作る「促進税制」だとか「補助金」「助成金」は、いつでも使いにくいものがほとんどすべてです。過去に1000万円程度の研究開発補助金を取得したことがありますが、ほぼ一年間に創造的な(!)研究開発を実行しなければならず、その間に1500万円以上の支出を実行して、先に費用の消費をしている上で、審査を受けて吟味の上で研究の実態を確認され(それも素人の役人さんが立ち入りしてきます)、その翌年にこまかな費用支出明細を提出してはじめて3分の2にあたる1000万円を貰うというもので、相当な資金体力と人事的な経費増を強いられました。加えてその研究開始時期と終了時期を国会の動きに拘束され、当方はきわめて異例の酷い年でしたので5月の連休明けから開始せよ、と指令されました。こんな創造的研究開発がやれるのならば、東大法学部出身のキャリア諸兄に一度やってみせていただきたいものです。(笑)
投稿者: シャルドネ | 2007年2月18日 07:26
この制度、村田さんがお書きになっているとおり、会計帳簿の整備が厄介です。今後の分は新規に勘定科目やプロジェクト・コードを設定して対処すればよいのですが、比較対照する前期以前の分を集計するのは手間がかかります。
また、制度があるからといって余り業務と関連性のないことまで研修費用としてしまうと、対象となった従業員等への給与課税が心配です。
以上の理由で結構使いにくい制度のように思います。
また「外部」研修、「外部」委託等のみが対象ですから、「競争力UP」というのは役所の唱えるお題目で、はっきり言うと、ここ10年くらいで大きく力をつけてきた語学学校会社やビジネス研修を売り物にする人材派遣などの会社への「隠れた補助金」ではないでしょうか。伝統的には日本の会社はOJTで学校教育の上に会社独自のノウハウを積み上げてきたのですから。
投稿者: だるまちゃん | 2006年8月 7日 12:27