低額譲受/高額譲渡/高額譲受-法人税上の取扱い
低額譲渡に関する解説(本ブログの9月29日付記事、カテゴリー"租税法解説"を参照して下さい)は色々と散見されますが、低額譲受、高額譲渡、高額譲受の解説は少ないです。今回は低額譲受、高額譲渡、高額譲受をまとめて解説いたします。それぞれ似て非なる内容となっています。
独立した当事者間で合意した取引価額は通常「時価」と見做されます。ですから、独立した当事者間で合意した取引から低額譲受、高額譲渡、高額譲受が問題になることは実務上ほとんどありません。法人税法上、それら取引が問題となるのは、支配・被支配関係にある者が行った取引です(法人税法上の「時価」の説明は、本ブログの9月15日付記事、カテゴリー"租税法解説"を参照して下さい)。注意を要する点として、支配・被支配関係にある者の判定は、持分関係のみならず経済的従属関係も考慮されてなされます。税法上、「著しく低い価額による譲渡」という概念があります。しかし、この概念は法人税法上、適用されません。主に所得税上、適用される概念であります。その事申し添えます。
低額譲受
資産を時価より低い価額で譲受けることを低額譲受と言います。
支配・被支配関係にある者から低額譲受が行われた場合、時価と譲受価額との差額が益金に計上されます。例えば、時価100百万円の固定資産を70百万円で購入した場合、譲受人である法人は次の仕訳を行います。
(借方)固定資産 70百万円 (貸方)未払金 70百万円
しかし、税務上の固定資産の取得価額は、時価により100百万円となります。そして、時価と取得価額との差30百万円は受贈益として益金になります。関連条文を参考のため、下記に引用します。
法22②「内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。」
高額譲渡
資産を時価より高い価額で譲渡することを高額譲渡と言います。
支配・被支配関係にある者から高額譲渡が行われた場合、例えば、時価100百万円、簿価50百万円の固定資産を150百万円で売却した場合、譲渡人である法人は次の仕訳を行います。
(借方)未収入金 150百万円 (貸方)固定資産 50百万円
固定資産売却益 100百万円
税務上の益金は、真の固定資産売却益50百万円(時価と簿価の差額)に、譲受人から贈与された贈与益50百万円が加算されて100百万円となります。結果として、会計上の利益と一致します。よって、高額譲渡の場合、税務上特段の処理は行われません。
高額譲受
資産を時価より高い価額で譲受けることを高額譲受と言います。
支配・被支配関係にある者から高額譲受が行われた場合、例えば、時価100百万円の固定資産を150百万円で取得した場合、譲受人である法人は次の仕訳を行います。
(借方)固定資産 150百万円 (貸方)未払金 150百万円
税務上、簿価は100百万円で、取得価格と時価の差額50百万円は譲渡人への寄付金処理が当該資産取得時の妥当な税務処理と考えます。
実務上、高額譲受が問題になるのは、財政状態の悪い会社の事業を買収し、多額の営業権を譲受会社が計上した場合です。そのような営業権は価値のないものだから、高額譲受をしたと同様であると税務当局は推定します。価値のない営業権と認定された場合、営業権の償却費の損金算入は否認されます。
営業権の償却に関わる関連条文を参考のため、下記に引用します。
法31⑥(減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法) 「第一項の選定をすることができる償却の方法の種類、その選定の手続その他減価償却資産の償却に関し必要な事項は、政令で定める。 」
法令13八ル(減価償却資産の範囲)無形固定資産として列挙された中に「営業権」
法令48①四(減価償却の方法)「第十三条第八号に掲げる無形固定資産(次号に掲げる鉱業権を除く。)及び同条第九号に掲げる生物 定額法」
補足的ですが、会社法では「営業権」という用語は使用してません。暖簾(のれん)と言う用語が使用されています。会社法の施行により、商法285の7の規定(暖簾の評価)は削除されています。その代わり、会社計算規則11条から29条にのれん(平仮名表記になりました)として計上出来る要件が規定されています。