節税行為
節税行為とは租税負担を合法的に軽減する行為を言います。
租税は一定の課税要件事実に該当する場合に課税されます。課税要件とは、納税義務者、課税の対象となる取引、その取引金額、適用される税率等を言います。そして、課税要件は法定されている必要があります。これら課税要件を個々の取引に当てはめて、合法的に税金が課されないようにする、ないしは、課される税金が軽減されるように経済行為を行うことを節税行為といいます。経済取引を行うに当たって租税負担の軽減を図ることは自然なことであり、その結果として節税効果が大きかったとしても、過度の租税回避行為として否認することは出来ないと解します。しかし、企業が採用した節税策を過度の租税回避行為として否認する課税処分が増えています。課税庁が否認する根拠はどこにあるのでしょうか。本ブログの11月24日付記事、カテゴリー"租税法解説"「脱税行為」に投稿者、こばやし(しん)さんから"税理12月号(ぎょうせい)「租税回避行為の否認と仮装行為の否認」(品川芳宣)"の論文の紹介がありました。そこで、早速、その論文を読みました。
品川先生の論点は、以下の通りと解します。
1) 租税回避行為については、法人税法132条(同族会社等の行為又は計算の否認)のような否認規定が存しない限り否認できない。
2) 租税回避行為と認められる行為の基因となる法形式を仮装した場合は、租税回避行為を否認できる(仮装行為の否認)。課税要件事実の判定は仮装された(表面上の)事実や法律関係でなく、隠蔽ないし秘匿された(真の)事実や法律関係ですべきであるがその根拠となっている。
しかし、品川先生は節税効果のある私法上の法律行為を安易に仮装行為と認定する昨今の税務執行に懸念を示されています。税務調査では、仮装行為とみられない節税行為であっても実質課税の原則を錦の御旗にして否認してくる事案が少なからずあります。実質課税の原則では、契約書の法形式、および契約書に認められている文言に拘らず、経済的実質に対して課税することが認められる原則です。この"経済的実質に対して課税する"という意味は、仮装行為の否認と同義と解します。"経済的実質に対して課税する"は仮装された事実や法律関係でなく、隠蔽ないし秘匿された事実や法律関係に課税すると読み替えることができるでしょう。しかし、現実は違います。仮装行為がなくても節税効果の大きい取引を否認するために、課税庁は自分たちに都合よく実質課税の原則を解しています。私見ですが、不自然不合理な契約を締結して課される税金が軽減されるような経済行為を仮装行為の否認に準じて否認することは至当と解しますが、不自然不合理でない契約を締結してなされた経済行為が節税効果をもたらした場合、その経済行為を否認することは、実質課税の原則の濫用に当たると解します。
法人税法132条(同族会社等の行為又は計算の否認)および実質課税の原則、それ自体の法人税法上の条文はありませんが、関連する条文として法人税法11条(実質所得者課税)を参考のため引用します。
法132「税務署長は、次に掲げる法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合において、その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。
一 内国法人である同族会社
二 イからハまでのいずれにも該当する内国法人
イ 三以上の支店、工場その他の事業所を有すること。
ロ その事業所の二分の一以上に当たる事業所につき、その事業所の所長、主任その他のその事業所に係る事業の主宰者又は当該主宰者の親族その他の当該主宰者と政令で定める特殊の関係のある個人(以下この号において「所長等」という。)が前に当該事業所において個人として事業を営んでいた事実があること。
ハ ロに規定する事実がある事業所の所長等の有するその内国法人の株式又は出資の数又は金額の合計額がその内国法人の発行済株式又は出資(その内国法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の三分の二以上に相当すること。
2 前項の場合において、内国法人が同項各号に掲げる法人に該当するかどうかの判定は、同項に規定する行為又は計算の事実のあつた時の現況によるものとする。
3 第一項の規定は、同項に規定する更正又は決定をする場合において、同項各号に掲げる法人の行為又は計算につき、所得税法第百五十七条第一項 (同族会社等の行為又は計算の否認等)若しくは相続税法第六十四条第一項 (同族会社等の行為又は計算の否認等)又は地価税法 (平成三年法律第六十九号)第三十二条第一項 (同族会社等の行為又は計算の否認等)の規定の適用があつたときについて準用する。」
法11「資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の法人がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する法人に帰属するものとして、この法律の規定を適用する」