2007年1月アーカイブ

消費税の長所と短所

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長所ー消費税の長所にはいくつかありますが、筆者はクロヨン問題の解消に役立つ効果が非常に大きいことが最大の長所と考えます。クロヨン問題とは、給与所得者が所得の9割を捕捉されるのに対し、事業所得者は6割、農業所得者は4割しか補足されないという所得捕捉率の格差を表す所得税における不公平感を象徴する言葉です。よく本邦の所得税の国民負担率は他の先進諸国に比べて低い、よって、増税する余地は十分にあるという議論が財務省筋の情報として新聞に載せられています。国民の多くはそのような議論に納得していません。それはクロヨン問題が厳然としてあると国民の多くは感じているからです。クロヨン問題に手をつけないで増税することは、国民全般に対する増税ではなく、サラリーマン泣かせの増税であり不公平であると感じている思います。所得は非常に厳格かつ網羅的な背番号制度を導入しない限り、正しい所得を制度として捕捉することは不可能です。ですから所得を拠りどころにした所得税は、本源的に所得の捕捉に問題があります。一方、消費税は消費という外形的に捉えやすい経済行為を課税ベースにしていますので、所得捕捉率という問題は生じません。それゆえ、クロヨン問題の解消に役立つ効果は非常に大きいと考えます。私はクロヨン問題の解消に役立つ効果が定量的効果で示される必要はないと考えています。定性的効果で十分と考えます。

短所ー消費税の短所は課税の逆進性(所得の少ない家計ほど、所得に対して負担する消費税の割合が高くなる)にあります。しかし、逆進性は解決する術があります。1月19日付け本ブログ記事「消費税問題について」(カテゴリー”税制改革”)で述べています。ご一読下さい。

制度上の問題点ー本邦消費税はインボイス方式を採用していません。これが制度上の問題点です。本邦消費税の制度上の問題点の解決は、必須の事柄であます。制度上の問題点を説明します。EUでの付加価値税では、課税業者の選択をしない限り、事業者は(付加価値税が別記された)請求書の発行ができません。これをインボイス方式と呼びます。インボイス方式の下では、免税業者/非課税業者から仕入れについて税額控除をとることは出来ません。このようなことから、EU域外域内の事業に対して課税の中立性を維持され、課税権の侵食を防がれます。一方、本邦消費税はインボイス方式を採用していません。インボイス方式を採用していない場合、免税業者から仕入れについても税額控除が認められてしまいます。その結果、益税が発生する可能があります。「消費税の構造的欠陥を修復しないで、税率の増加が将来実施されることを前提にすると、消費税回避のプランニングが横行するものと考えます」と投稿者西堀さんは言っております。まったく西堀さんの意見に同感です。税制を考える上での三大原則は「公平」「中立」「簡素」です。消費税の「中立」を担保する観点から、消費税率のアップより前に制度上の問題点の解決(インボイス方式を採用)が求められます。その問題点の解決は、更に「公平」に資する効果があると確信いたします。

政治の重要性ー今は社会がグローバル化されています。グローバル化社会で事業を営む多国籍企業は、税率の高い国から低い国へ所得移転をすることは比較的容易です。一方、消費は非常に地域に密着したものです。つまり、所得に比較して消費はグローバル化社会でも動きません。消費税を払う通常の消費者は消費税の税率が10%になっても、文句を言って国外移住を容易くできるものではありません。ですから、与党、野党を問わず政治家が取り組まなくてはいけない消費税問題は、消費税の負担を国民はどの程度までなら容認できるのかの議論を国会の場で行い、国民のコンセンサスを得ることです。

消費税問題について

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12月8日付け本ブログ記事“「消費税問題先送り」をどう思いますか?”(下記参照して下さい)で皆様の投稿コメントをお願いしました。しかし、エントリーされたコメントは樫田さんからの1件のみでした。それは関心が低いからではなく、わが国の消費税議論が税制という枠組みの中だけで議論されているから回答し難いが、皆さまの率直な気持ちではないかと推測されます。

先ず、日本の現状は歳出が歳入を大きく上回っており、財政再建が急務と国民は考えています。ここでの財政再建は10年程度を目途に達成すべき性格の問題であります。しかし、日本の少子高齢化はもっと長いスパンで見る必要があります。今の人口が2050年までには8千万人にまで減少する予測も出ています。つまりこれから30年から40年先を見据えて考えるべき問題です。財政再建という中期的問題と少子高齢化という長期的問題は相互に関連する問題ですが、同じ土俵で扱うべき問題ではありません。財政再建を果たしたとしても、その解決策が超高齢化社会の負担増を解決する策であるとは必ずしも言えません。

OECD21カ国のデータを分析した結果、財政再建は増税ではなく、経済活性化による税の増収(安倍内閣の上げ潮戦略がそれに該当)と歳出削減が効果的であることを実証的分析が証明しています。消費税問題を財政再建の道具として考えることは不適切で、少子高齢化という長期的問題の解決方法として妥当か否かという観点で捉えるべきと考えます。樫田さんのコメントはまさに消費税問題を少子高齢化という長期的観点から捉えており傾聴に値すると解します。

樫田さんのコメントは以下の通りです。
「消費税の税率UPは、先送りしてはいけない。先送りすると、将来UPする税率もあがる。かといって現在の景気環境した急速な税率UPは消費マインドを低下させ、景気後退要因となるので、毎年1%ずつ上乗せしていく、逓増UP方式を採用すべきと思料します。最終年は10%程度に抑えたい。」

消費税問題で解決すべき問題は、?国民が大きな政府を必要とするのか小さな政府で良いのか国民のコンセンサスを得ることと、?消費税の逆進性(所得の少ない家計ほど、所得に対して負担する消費税の割合が高くなる)を解決する方策をとることです。消費税の逆進性を解決する方策はあります。ヨーロッパにおいては日常品に対して消費税がかからない、つまり、食料品等にゼロ税率を課しています。消費税の逆進性を以って消費税率のアップの反対を叫ぶ野党は、自ら政策能力のなさを公にしているようなものと考えます。与党、野党を問わず政治家が取り組まなくてはいけない課題は、税と社会保険料を合わせた国民の負担をどの程度までなら容認できるのか「政府のサイズ」に関する国民の選択の議論を国会の場で行うことと解します。国民が納得できる数値(金額の多寡ではなく、信頼性の高い数値)を示して議論することではじめて国民のコンセンサスを得ることが可能になると思料いたします。

次回以降で「消費税の長所と短所」と「日本の硬直した制度の問題点」を議論してみたいです。


正当な理由

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申告を誤ったことについて正当な理由のある時は、その理由に対応する税額に対して加算税は賦課されません。その根拠条文が国税通則法第65条第4項です。当該条文を下記に引用します。

通則65?「第一項又は第二項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となつた事実のうちにその修正申告又は更正前の税額(還付金の額に相当する税額を含む。)の計算の基礎とされていなかつたことについて正当な理由があると認められるものがある場合には、これらの項に規定する納付すべき税額からその正当な理由があると認められる事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除して、これらの項の規定を適用する。」

正当な理由とは(1)税法の公表されていた解釈の変更、(2)申告時に確定出来なかった偶発利益、(3)その他真に已む得ない理由と解されています。しかし、課税庁はこの正当な理由を非常に狭く解釈して加算税を賦課してきます。極端な例として、認められたひとつの税法の解釈が変更され、変更後その解釈が認められなくなった時、その変更前の解釈による処理を課税庁は遡及的に更正することがあります。更にその更正に加えて加算税も賦課します。ストックオプションの所得認識(給与所得か一時所得か)においては、まさに上記のような税務執行(遡及的更正決定と加算税の賦課)が行なわれました。それに対して最高裁は通則65?の正当な理由に該当するとして、加算税取り消しの判断を平成18年10月24日に下しました。

最高裁の判断が正当な理由に対して下ったから、課税庁がその執行態度を改めるかというと疑問です。真に正当な理由があると信じるにも拘らず、加算税が賦課されたら訴訟も辞さないという姿勢が納税者に求められます。

推計課税

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税務調査の執行において直接資料によらず、各種間接的な資料を用いて得た情報で更正し、課税することを推計課税と言います。推計課税をたとえていえば、蕎麦やとかラーメン屋の売上は捨てられた割り箸の数を集計して売上を推計して、その推計された売上から課税するのです。
推計課税に関わる条文を下記に引用します。

法131「税務署長は、内国法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合には、内国法人の提出した青色申告書に係る法人税の課税標準又は欠損金額の更正をする場合を除き、その内国法人(各連結事業年度の連結所得に対する法人税につき更正又は決定をする場合にあつては、連結子法人を含む。)の財産若しくは債務の増減の状況、収入若しくは支出の状況又は生産量、販売量その他の取扱量、従業員数その他事業の規模によりその内国法人に係る法人税の課税標準(更正をする場合にあつては、課税標準又は欠損金額若しくは連結欠損金額)を推計して、これをすることができる。」

推計課税は白色申告の法人に対して適用される方法で、青色申告法人に対しては許される方法ではないと解します。しかし、青色申告法人も、課税庁が帳簿の内容が不正確で信頼性に欠けると判断した時、あるいは調査に非協力的であると判断した時、青色申告の特典が取り消され、白色申告法人となってしまいます。そのような(課税庁にとって筋の悪い)法人は青色申告取り消し後、速やかに推計課税が行なわれる可能性が大です。

推計課税が通常の青色申告法人でも行なわれる可能性があります。それは移転価格の調査においてです。移転価格算定方式及びその算定結果の写しの提示又は提出を求めた場合において、当該法人がこれらを遅滞なく提示し、又は提出しなかつた時は推計課税が許されます。当該条文は租税特別措置法66条の4第7項です。当該条文を下記に引用します。実際の移転価格調査において問題になるのは、提出された資料が(課税庁にとって)不十分だった場合です。課税庁の要求する資料の精度が非現実的に高い場合が良くあります。そのような場合、提出された資料は不十分な資料と取扱われます。そして、推計課税の要件は満たしたと課税庁が強弁してくる場合は少なからずあります。

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