消費税ーインボイス方式
1月26日付け本ブログ記事「消費税の長所と短所」(カテゴリー"税制改革")の中で、現行消費税の制度上の問題点としてインボイス方式を採用していないことを挙げました。また、当該記事で「EUでの付加価値税では、課税業者の選択をしない限り、事業者は(付加価値税が別記された)請求書の発行ができません。これをインボイス方式と呼びます」との説明をしました。しかし、この説明ではインボイス方式を理解するには不十分と思料いたします。今後の消費税問題の議論では、インボイス方式を導入するか否かが重要な争点になります。そこでインボイス方式について加筆することにしました。
消費税は原材料の加工から最終消費者の購入に至るまでの各段階で事業者が生み出した付加価値を課税標準として多段階で税を徴収する税です。例を挙げます。ある事業者が部品を仕入れて、それを組立(つま人件費が発生)、それに利益をプラスして販売した場合、その事業者が生み出した付加価値は人件費と利益の総計です。消費税は個別事業者の付加価値を計算して、それに税率を乗じて納付すべき税を計算する方式ではありません。各事業者の生み出す付加価値は千差万別ですので、付加価値の算定は困難を伴います。そこで、前述の例を用いて説明しますと、事業者が販売した製品に賦課した消費税から、部品を販売した事業者が賦課してきた消費税を差し引いた税額が、納付する消費税となります。その結果、事業者の付加価値に税が課せられたと同じ結果をもたらします。事業者は消費者から受取った消費税から他の事業者から賦課されてきた消費税の差額を納付します。
消費者から受取った消費税をごまかすことは出来ませんが、今の消費税の制度(帳簿方式)は他の事業者から賦課されてきた消費税をごまかすことが出来ます。何故か?事業者には、課税業者、非課税業者、免税業者が居ります。帳簿方式による場合、非課税業者、免税業者からの仕入も消費税が課されたとして処理されても実務上は分かりません。仕入に関わる消費税がより正確に、かつ取引当事者間で相互牽制作用が働き、ごまかしが出来ないようにするには、取引当事者間で文書を取り交わすことです。そして、その文書の情報でしか賦課された消費税の額の計算は出来ないようにすることです。インボイス方式とは消費税の金額が記載された文書を取引当事者間取り交わし、その取り交わした文書に記載された消費税でしかで賦課された消費税の額の計算は出来ないようにする方式です。この方式に拠れば、消費税を払っていない非課税業者、免税業者からの仕入を排除でき、消費者が支払った消費税を事業者が不正に懐に入れることが防げます。
EUのインボイス方式では、課税業者を届け出た業者しか証拠資料となるインボイスの発行は出来ません。したがって、免税業者からの仕入に対して税額控除は出来なくなります。また、インボイスには税額の記載が義務付けられています。
1月26日付け本ブログ記事「消費税の長所と短所」(カテゴリー"税制改革")で、『消費税の「中立」を担保する観点から、消費税率のアップより前に制度上の問題点の解決(インボイス方式を採用)が求められます。その問題点の解決は、更に「公平」に資する効果があると確信いたします』と書きました。上記説明でその意味がより明確になったと思います。
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コメント
なるほど。よく分かりました。事務作業の手間が増えるのでしょうが、それで不正が防げるのでしたら、取り入れるべきである、という意見に賛成です。ただ、この方式による弊害はないのですか?
(村田)わたなべさん、国税サイドの事務作業の手間が増えることがコストという面ではマイナスです。消費税率が3%の時に、徴税コストを考えると帳簿方式は間違った選択とは思いません。しかし、消費税を増税した時、ある程度の徴税コストをかけても公正な徴収制度の確立が重要になってきます。また、インボイス方式は納税者サイドの事務作業の手間が増えるという議論がありますが、的を射ていない議論と解します。消費税の納税者は企業です。企業であれば正規の簿記の原則にしたがって記帳をしています(しなければならない)ので、実質負担増はないはずです。高税率の消費税の下、消費者がバカをみない公正な徴収制度が必要となります。ですから、相互牽制機能を持つインボイス方式の導入が望まれます。
投稿者: わたなべ | 2007年2月10日 11:38