2007年6月アーカイブ

お知らせー日本租税研究協会の会員懇談会で講師を務めることとなりました。

本懇談会は、租研の法人会員、個人会員の方が参加出来ます。本懇談会は下記の要領により開催されます。

  • 日時: 7月23日(月曜) 午後1時30分から3時まで
  • 場所: 日本工業倶楽部 4階第4会議室     (千代田区丸の内1?4?6)
  • 議題: 移転価格事務運営指針等への対応について
  • 講師: 公認会計士・税理士     村田守弘

今回の移転価格事務運営指針改訂作業では、無形資産(特許権やブランド)の課税範囲を明らかにすることに力点が置かれております。そして、無形資産の課税範囲の例示しております。多くの本邦企業にとって関心ある事柄と思料いたします。

受取配当金

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租税法解説ー受取配当金の法人税法上の取扱いを説明しています。

法人が他の会社から配当を受けた場合、当該法人は申告を条件として受取配当金を益金不算入にする取扱いが認められます。受取配当金の益金不算入の取扱いは、その配当金の支払いが子会社・関係会社(関係法人株式等)からされた場合とそれ以外の会社された場合で異なります。前者の場合は、受取配当金の全額が益金不算入となりますが、後者の場合は100分の50が益金不算入となります。

さらに、配当計算期間の末日以前1ヶ月以内に対象となる株式を取得し、かつ、配当計算期間の末日以後2ヶ月以内に売却した場合には、当該受取配当金は益金算入されます。また、受取配当金の益金不算入の額は、会計上認識された受取配当金から株式取得に関わる借入金の支払い利息を差し引いた金額です。これを受取配当等から控除する負債の利子と呼びます。

関係法人株式等とは配当を受け取る内国法人が他の内国法人の発行済株式総数(出資金額)の25%以上を、配当等の支払義務が確定する日以前6か月以上引き続き保有している場合の株式等です。

受取配当金の益金不算入は、法人擬制説(法人は、それ自体が実在しているように見える組織であるが、実は、株主の単なる集合体に過ぎないという考え)にその理論的根拠を置いています。よって、法人の所得は、究極的に個人株主に帰属して完結します。法人が別法人から受取配当金をうけた場合、当該別法人で課税された税引き後の所得が配当になります。その配当が更に課税されると同一所得に対して二回課税されるという二重課税が発生します。株主に配当される前に二重課税されることは、法人擬制説の下では、不合理です。よって、受取配当金は益金不算入の取扱いが必要とされます。 受取配当に関わる条文を下記に引用します。

税制改革ー若年層の格差が問題となっています。その格差解消の施策のひとつとしての「給付つき税額控除制度」を説明します。

租税研究(日本租税研究協会発行)2006年11月号に掲載され中央大学法科大学院教授、森信茂樹先生の記事「格差問題と税制」は興味ある内容ですので、ここで簡単に紹介させてもらいます。

全国消費実態調査によりますと、ひとつは若年層の格差が拡大してきています。もうひとつは高年齢の格差です。会社生活を続けていれば勝ち組と負け組みに分かれて、ある程度高齢者間での格差が生じることは、已む得ないことかもしれません。しかし、極端な格差が生じることは問題です。

少子化解消のためには、若年層の格差解消の施策をとることが大事です。若年層の格差は非正規雇用やフリーターの増加から生まれてきています。それらの人々の年収(200?300万円)では結婚できません。これが更なる少子化に結びつくという悪循環になります。そこで、森信先生は、若年層の格差にポイントをおいて議論を進めています。税・社会保障の所得再分配機能を利用した格差解消策として、森信先生は「給付つき税額控除制度」の提案をしています。

給付つき税額控除制度とは、ある一定以下の所得水準の家庭には生活保護を給付する。そして、その家庭の所得が上がっても、一定の所得水準に達するまで(税額控除の方法で)減税措置が受けられるようにし、一定の所得水準を超えた時、減税措置がなくなる制度です。給付つき税額控除制度は欧米で広く採用されている制度で、格差解消にかなりの効果を発揮しているそうです。

給付つき税額控除制度をわが国で導入する際の課題として森信先生は、下記の事項を示しています。

  1. 税制と社会保障給付を一体運営するためには、霞ヶ関の縦割り制度を改める必要がある。
  2. 不正還付を防ぐ手当が必要である。
  3. 給付つき税額控除制度は家族単位で管理する必要がある。現在の所得税は個人単位で家族単位になっていない。
  4. バラバラの社会保障と税を整合して税・社会保障の所得再分配機能の効率化を図ること。

給付つき税額控除制度の導入だけでは、不十分で「上記課題を解決する骨太の抜本的制度改革が必要」として森信先生の記事は終わっております。

格差解消は、少子化対策にもなるという非常に示唆に富んだ記事です。これを契機にして給付つき税額控除制度という言葉だけでも、みなさまの頭の整理箱に入れておいて下さい。 

 

 

課税標準

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租税法解釈ー税法の基本概念のひとつである「課税標準」を説明しています。

課税標準は、課税物件を金額、価額、数量等で表わしたものです。金額ないし価額を課税標準として課される租税を従価税といい、数量を課税標準として課される租税を従量税といいます。所得税においては、課税物件は所得であり、課税標準は所得金額です。各税における課税標準は以下の通りです。

  • 法人税ー法人の所得金額
  • 所得税ー個人の所得金額
  • 相続税ー取得した資産の価額
  • 贈与税ー取得した資産の価額
  • 消費税ー資産の譲渡、サービスの提供の対価の額
  • 酒税ー酒類の移出量

課税標準は税額算定の直接の基礎となります。法人税、所得税では課税標準の認定が複雑ですですので、課税標準確定のためには特別の手続(決算書の作成、申告調整等)が必要となります。税務調査で主に調べられるのは、課税標準の妥当性です。

格差是正の税制改革として、話題の“ふるさと納税”について、私見を述べます。 

ふるさと納税に関する週刊ダイアモンド(2007/06/02)の記事は次のようなセンセーショナルな書出しで始まっています。

「後世に天下の大愚策として名を残すこと間違いなしの政策が久々にぶち上げられた。それは“ふるさと納税”である。」

私見を述べます。個人住民税の一部を故郷に回し、地方の財政不足を解消するというふれ込みが“ふるさと納税” です。望郷の念を持つ多くの人々の琴線にふれるメッセージです。しかし、“ふるさと納税”は情に訴える政策で、参議院選挙目当ての人気取り政策と考えます。“政治によって生きる政治家”にとっては、政治家でいることが大事です。政治家は、情と共に理に適った政策を提言すべきです。マックス・ウェーバーが求めた“政治のために生きる政治家”であれば、“ふるさと納税”を提言することはないと思料します。“ふるさと納税”が理に適っていないことを述べます。 

先ず、費用と効果の観点から考察します。総務省が作成した平成19年度地方団体の歳入歳出の見込み額では、歳入の合計額は83兆円です。その内訳は、地方税40兆円、地方交付税16兆円、国庫支出金10兆円、地方債等17兆円です。地方税40兆円の約四分の一が“ふるさと納税”の対象となる個人住民税で、残りの30兆円は法人住民税、事業税、地方消費税、固定資産税です。“ふるさと納税”は最大でも個人住民税の10%と言われています。つまり約1兆円、全体の歳入の1%強が今検討されている“ふるさと納税”です。この1%のために追加的に発生する事務負担(誰が、どこに、いくら納税したいかを毎年調べる人件費)は多大なものになることが予想されます。 

次に、都道府県別に見た人口1人当たりの税収格差を考察します。東京がダントツではないかと皆様は想像すると推察しますが、事実は異なります。総務省が作成した地方税と地方交付税の人口1人当たり収入金額(平成17年度)によれば、東京を100とした場合、島根は123.8、高知は109.2、秋田は101.1です。過疎地域の県が意外と人口1人当たりの税収は高いです。ビックリすることは、埼玉は58.3、千葉は62.2、神奈川は63.2と東京近郊の県は非常に低いです。埼玉、千葉、神奈川に住む人がふるさとに納税をしたら、自分の住む県の税収は更に減ることになります。するとそれらの県が提供する警察、消防、ゴミ処理等のサービス低下をもたらします。 

更に、地方税の基本から考察します。前述しましたように地方自治を司るための歳入は、地方が提供する警察、消防、ゴミ処理等のサービスのために費消されます。従って、行政サービスを受ける居住地以外の地に納税することは、応益に応じて負担するという地方税の基本に反します。“ふるさと納税”した人は、居住する地域のサービスにただ乗りすることとなり、その分は他の納税者の負担が増えることになります。公平の観点からも問題があります。

費用と効果の観点から、都道府県別に見た人口1人当たりの税収から、そして地方税の基本から“ふるさと納税” は大いに問題ありです。

格差は地域現象として現れている面もありますが、政治として取り扱う格差とは社会的に弱者になっている人の救済にあると思います。ワーキング・プアーと呼ばれるグループの問題、90歳以上の人が100万人を超える社会での介護の問題が私は格差の問題と解します。次回は、ワーキング・プアーと呼ばれるグループの格差問題を税の観点から検討してみたいです。

地方交付税と国庫支出金を説明します。

 

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