格差是正の税制改革-ふるさと納税
格差是正の税制改革として、話題の“ふるさと納税”について、私見を述べます。
ふるさと納税に関する週刊ダイアモンド(2007/06/02)の記事は次のようなセンセーショナルな書出しで始まっています。
「後世に天下の大愚策として名を残すこと間違いなしの政策が久々にぶち上げられた。それは“ふるさと納税”である。」
私見を述べます。個人住民税の一部を故郷に回し、地方の財政不足を解消するというふれ込みが“ふるさと納税” です。望郷の念を持つ多くの人々の琴線にふれるメッセージです。しかし、“ふるさと納税”は情に訴える政策で、参議院選挙目当ての人気取り政策と考えます。“政治によって生きる政治家”にとっては、政治家でいることが大事です。政治家は、情と共に理に適った政策を提言すべきです。マックス・ウェーバーが求めた“政治のために生きる政治家”であれば、“ふるさと納税”を提言することはないと思料します。“ふるさと納税”が理に適っていないことを述べます。
先ず、費用と効果の観点から考察します。総務省が作成した平成19年度地方団体の歳入歳出の見込み額では、歳入の合計額は83兆円です。その内訳は、地方税40兆円、地方交付税16兆円、国庫支出金10兆円、地方債等17兆円です。地方税40兆円の約四分の一が“ふるさと納税”の対象となる個人住民税で、残りの30兆円は法人住民税、事業税、地方消費税、固定資産税です。“ふるさと納税”は最大でも個人住民税の10%と言われています。つまり約1兆円、全体の歳入の1%強が今検討されている“ふるさと納税”です。この1%のために追加的に発生する事務負担(誰が、どこに、いくら納税したいかを毎年調べる人件費)は多大なものになることが予想されます。
次に、都道府県別に見た人口1人当たりの税収格差を考察します。東京がダントツではないかと皆様は想像すると推察しますが、事実は異なります。総務省が作成した地方税と地方交付税の人口1人当たり収入金額(平成17年度)によれば、東京を100とした場合、島根は123.8、高知は109.2、秋田は101.1です。過疎地域の県が意外と人口1人当たりの税収は高いです。ビックリすることは、埼玉は58.3、千葉は62.2、神奈川は63.2と東京近郊の県は非常に低いです。埼玉、千葉、神奈川に住む人がふるさとに納税をしたら、自分の住む県の税収は更に減ることになります。するとそれらの県が提供する警察、消防、ゴミ処理等のサービス低下をもたらします。
更に、地方税の基本から考察します。前述しましたように地方自治を司るための歳入は、地方が提供する警察、消防、ゴミ処理等のサービスのために費消されます。従って、行政サービスを受ける居住地以外の地に納税することは、応益に応じて負担するという地方税の基本に反します。“ふるさと納税”した人は、居住する地域のサービスにただ乗りすることとなり、その分は他の納税者の負担が増えることになります。公平の観点からも問題があります。
費用と効果の観点から、都道府県別に見た人口1人当たりの税収から、そして地方税の基本から“ふるさと納税” は大いに問題ありです。
格差は地域現象として現れている面もありますが、政治として取り扱う格差とは社会的に弱者になっている人の救済にあると思います。ワーキング・プアーと呼ばれるグループの問題、90歳以上の人が100万人を超える社会での介護の問題が私は格差の問題と解します。次回は、ワーキング・プアーと呼ばれるグループの格差問題を税の観点から検討してみたいです。
地方交付税と国庫支出金を説明します。
地方交付税は、国税の一定割合を割いて、一般財源が不足する地方自治体に配分される。一般財源を保障するものであるので、特定目的の国庫支出金(国庫負担金、補助金など)とはことなりその使い途は特定されていないので、自治体の裁量で使途を決めればよい。このような仕組みを「地方財政調整制度」という。この財政調整制度は、地域間の財源のあり方、とくに地方税の税源が均等ではなく、著しい地域差がある状況を前提に、全国どこの府県、市町村でもほぼ同一水準の一般財源を保障しようとするものである。また、地方交付税の機能としては、消防や高齢者福祉などの個々の行政ごとに標準的な財政需要の水準を示すことによって、いわばナショナル・ミニマムを提示するという、個別行政の財源保障という機能をも合わせもっている。
国庫支出金は使途が特定された支出金である。国が地方自治体に対して補助金、交付金、負担金、補給金などさまざまな名称で支出金を交付している。また、「三位一体の改革」において、2006年度までに総額で四兆円の国庫支出金を廃止・縮減し、約三兆円の税源移譲を行うことが政府・与党の合意を得て2004年12月に閣議決定されている。