終身雇用を考える

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日本経営の代表的特徴である終身雇用について私見を述べています。

私が税理士法人の代表であった時、日本経営の代表的特徴である年功序列終身雇用に対して、私は「年功序列は組織運営上弊害となる。しかし、終身雇用は保証すべきである」との見解を持っていました。その見解を持っていながら、「終身雇用は保証すべきである」の部分が何かしっくりこなかったことは事実でした。日本経営の代表的特徴である年功序列と終身雇用を指摘した学者がジェームス・C・アベグレンという米国人であることを最近知りました。彼は、日本経営の代表的特徴はLifetime Commitmentであると彼の論文の中で述べていたそうです。Lifetime Commitmentが終身雇用と訳されたこと、それが後日、Lifetime Employmentと再翻訳されたことから、Lifetime Employment=終身雇用の概念となり、それがひとり歩きして、多くの人がその概念で終身雇用を論じるようになったのです。アベグレンが言いたかったことは、企業とそこに働く人々が共にコミットメント(義務、責務、責任、約束、公約、言質)を永続的に持つような企業経営に日本経営の代表的特徴が見出せるではないかと思料します。そう理解すると、私の中にある終身雇用に対するしっくりしない感情が目から鱗が落ちる如く消えていきました。

永続的コミットメント経営(Lifetime Commitmentを村田が意訳)の主たる施策は、長期雇用、手厚い福利厚生、内部留保の充実にあります。そして、その経営施策のもたらす効果が結果として、企業の無形資産の形成にあります。永続的コミットメント経営の持つメリットに関して、神戸大学の加護野忠男先生が書かれた記事(プレジデント 2007.7.2)を参考して述べます。

  • 改善へのインセンティブ。職場共同体の人々は、与えられ仕事の枠を超え、職場の改善のために知恵を使うようになる。
  • 社内統制コストの削減。人々は会社を自分のものと思っているから、自分の会社を傷つけるような行動を許さない。自制心が働く。
  • 積極的人材投資が可能。育成した人間が会社に残る安心感があるから、安心して人材投資が出来る。
  • 人材が企業の人財となる。人財こそ、国際競争の勝ち抜くための無形資産となる。

日本経済が右肩上がりの時代、人件費のアップは売上増により容易に吸収することが出来ました。それによって、安易な方向であるコミットメントなしの終身雇用が定着し始めました。しかし、バブルが弾けると、コミットメントなしの終身雇用がもたらす弊害が顕在化するようになりました。その結果、欧米の能力主義と成果連動型報酬制度が盛んに導入されました。 その点から考えると、日本企業の経営は、欧米型経営に移行しました。しかし、日本人には欧米人のDNAはありません。人財という無形資産を日本企業が創造するには、日本人のDNAに合った永続的コミットメント経営に回帰することも大事と考えます。私の結論は「永続的コミットメント経営を経営者はすべきである。しかし、年功序列は組織運営上弊害となるので、廃止すべきである」です。みなさまのご意見を聞きたいです。

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わたなべさんが指摘している「日本人が忘れかけている大事な事」に関して、私も同感です。本ブログ記事で取り上げた“コミットメント”の意味が、本来の意味(自分を律する、あるいは自分に課する責務)から変質して、自分に都合の良い意味(他人に強いる約束)になっているような気がします。コミットメント経営と言われる経営手法に綻びが生じているのも、コミットメントの意味の変質にその原因があるのではないかと推測します。成功体験をぶち壊さない限り、人は時の経過に伴って成功をもたらした原因を忘れ、結果だけを踏襲することになります。武田信玄の言葉として有名な「人は城、人は石垣、人は堀。情けは味方、仇は敵なり」に大いなる共感を私は持っています。この言葉には、将としてのコミットメントが現れています。市井のひとりとなりましたが、「日本人が忘れかけている大事な事」を忘れないよう心がけて行動していきたいです。

まさに目から鱗でした。そう考えると誤った翻訳(明らかな誤りではないけれど)からくる弊害は計り知れないものがあるという事ですね。ライフタイム・コミットメント、には納得できますし、日本人が持つ美徳の1つだと思います。是非今一度この考えが世の中に広まることを祈ります。日本人が忘れかけている大事な事な気がします。

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