誰が為に国は在る

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税制改革ー自民党の参議院での大敗で、政治の世界で税に関する思考停止状態が生じる可能性が大です。この状態を私は、大変懸念しております。税に関する思考停止状態は、世代人口が激減する30年後の30歳から40歳の人々に対して、我々は不作為(一定の作為を行う義務を行わないこと)であると思料します。それゆえ、「誰が為に国は在る」という題を付けました。

 

8月22日の日本経済新聞一面トップに次のような記事が載っていました。"自民党税制調査会の津島雄二会長は21日、日経新聞とのインタビューで、現行5%の消費税率引き上げに関し「参院は野党が過半数を持っている。既定方針そのままにやれるわけがない」と述べ、年末に決める2008年度税制改正大綱への明記は困難との認識を表明した。同時に消費税率の当面据え置きを主張する民主党との協議を提案。法人課税の実効税率引き下げも現状では難しいとの考えを示した。参院での与野党逆転に伴い、与党が描く税制の抜本改革は滞ることになる。党税調では町村信孝小委員長も日経新聞の取材に「(消費税率引き上げの)議論はしなければいけない。ただ、結論を出せる政治状況であるかと言えばなかなか厳しい」と指摘。これまで消費税率引き上げに前向きだった幹部が相次ぎ慎重論に転じている。"この記事を読んで、大変憂慮しております。

 

消費税率引き上げに前向きだった幹部とは、日本のこれからの税はどうあるべきかに関して、一家言を持っている政治家と考えられます。その政治家が税制改革を提言することを止めると言っています。その理由は、参院第一党になった民主党が消費税率を当面、据え置く方針を示しているからです。憂慮すべき点は、衆議院と参議院のねじれ現象によって、これからの政治の世界では、税に関して思考停止状態が続く可能性が大きいことです。

 

 私は、敢えて、税に関する思考停止状態に問題提起したいです。先ず、財政再建が急務と国民は考えています。OECD21カ国のデータを分析した結果、財政再建は増税ではなく、経済活性化による税の増収と歳出削減が効果的であることを実証的分析が証明しています。そして、日本も例外でなく、この1~2年の税の増収の結果、歳入と歳出は均衡してきております。消費税問題を財政再建の道具として考えることは不適切であり、短期的にみれば消費税率の引き上げは必要ないと考えます。その意味では、民主党の言っていることは正しいです。しかし、それでは30年から40年先を考えたらどうなるのか?今の人口が2050年までには8千万人にまで減少する予測も出ています。 つまりこれから30年から40年先を見据えて考えると、少子高齢化の影響(現在、30歳から40歳の人々が65歳以上になった時の年金と医療費を、世代人口が激減する30年後の30歳から40歳の人々が負担することを考えなければなりません。

現在問題にされている財政再建と少子高齢化の影響は、異質の問題です。残念ながら、今の日本に30年から40年先を見据えて行動する政治家はおりません。それは、有権者がそのような政治家を選ばないからです。有権者はバカなのか。そうではないと考えます。有権者に正しい情報が伝えられていないためと考えます。それは、政治家が説明責任を果たしてこなかったことと、マスコミがオピニオンリーダーの役割を放棄したためです。マスコミは影響力が大きいゆえ、苦言を呈します。ニュースを発信するマスコミ側に、社会の木鐸たらんとする気概が全く感じられなくなっています。特に最近のTVの報道番組に出てくる評論家の意見は、耳触りの良いことばかりで、中身がありません。有権者に正しい情報が伝えられていないため「30年から40年先のことを考えるのは政治家で、自分達ではない。俺たちは、毎日の生活が苦しくて大変なんだ。そんな時、増税なんてマッピラだ!」という支離滅裂な考えが視聴者の中でまかり通るようになります。 

税に関する思考停止状態が政治の世界で続くことは、我々の子供の世代に禍根を残すことです30年から40年先のことを考える政治家を選ぶよう有権者の意識を変える必要があります。

 

隗より始めよ。私見を申し上げます。与党、野党を問わず政治家が取り組まなくてはいけない課題は、

(1)税と社会保険料を合わせた国民の負担をどの程度までなら容認できるのか政府のサイズに関する国民の選択の議論を国会の場で行うこと。

(2)政府のサイズを議論するためには、信頼性の高い数値(将来年度の年金と医療費の負担額、それを賄うための税収と社会保険料の収入)を示して議論すること。

(3)必要な税収を確保するためにはどのような税制が妥当か、そしてその税率はいくらかを議論することです。 

 

税制の基本は「公平」「中立」「簡素」です。私は「公平」「中立」「簡素」を踏まえた上での21世紀の税制改革に関して微力ながら、情報発信を続けて行きたいです。日本はこれから50年間、少子高齢化の波が押し寄せるという現実(しかし、実感出来ない現実)を認識する必要があります。そして、30年から40年先のことを考える必要があります。私見ですが、望むべき有権者像があります。それは以下の通りです。

「少子高齢化の波は段々高くなる。これから30年も、40年も、50年も続くのだ。だから、俺たちは、30年から40年先のことを考える政治家を選ぶ必要があるんだ!俺たちは、けっして豊かではないけど、貧しくもない。俺の子供たち、孫たちのために出来ることがあれば、教えて欲しい!」 

 

 

30年から40年先のことを考えて、財政的手当をしている国があります。それは福祉国家・ノルウェーです。ノルウェーの例は示唆に富む内容です。

 

最近、SWF(Sovereign Wealth Fund-国富ファンド)が急速に拡大しています。SWFと言われるファンドは、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、シンガポール、ノルウェー等の国が運用するファンドです。それらファンドの運用先は米国債、ユーロ債、ヘッジファンドと多岐に渡っています。 あまり知られていませんが、ノルウェーは輸出量で世界第三位の原油産出国です。

 

また、ノルウェーも日本と同様に少子高齢化は進んでいるようです。ノルウェーの現在の年金受給者は60万人ですが、2050年には倍になります。しかし、原油輸出による収益はその時点では確実に減ることが予想されています。このような状況が予想される中、1990年にノルウェーのSWFは設立されました。当該SWFは、原油輸出による収益を財源として、石油資源枯渇後の子孫に年金を払う原資を確保するため運用されています。

 

ノルウェーのSWFは、30年から40年先の年金支払いに備えるために設立されたのです。当に政治の意思が働いています。ノルウェーの有権者が刹那的考えであったなら、政治家は長期的運用目的を持ったSWFの導入を国民に諮ることはなかったでしょう。

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2 Comments

期待人 said:

TBでたどり着きました。
理路整然としていてよく理解
出来ました。
有難うございます。

”財政再建と少子高齢化の影響は、異質の問題”というのはその通りだと思います。
しかし両方とも重要な課題であり
解決していかなくてはなりません。
”財政再建は増税ではなく、経済活性化による税の増収と歳出削減が効果的である”もそのとおりだと思いますが、日本の場合には残念ながら、増税しなければ間に合わないでしょう。(時間的に)
むちゃくちゃして今の状態ですから。
両方の課題の解決のために、おっしゃられているような議論が必要だと思います。
日本はこれから本当に苦しいですね。

こばやし(しん) said:

まさにおっしゃるように税について大局的な視野を持った政治家が日本には一人もいないことは大きな問題だと思います。

政治と税制は密接であるにもかかわらず、日本では選挙が近くなると税の話は急にタブーになる傾向にあります(確か昨年の税調の答申も相当トーンダウンしていました)。これは、国民の問題なのか政治家の問題なのかいろいろ考えさせられますが・・・(両方とも問題?)。

そもそも民主制は直接的には「徴税」や「税制」を巡って長い年月をかけて確立してきた制度であることを考え合わせると、税の議論こそ民主制のプロセスの中で徹底的に議論すべき項目の筈です。

そう考えると、政治家こそ税の専門家たるべきです。しかし、今回の選挙は、政治資金を巡る一連の騒ぎでは「いかに政治家は税に疎いか」及び「政治家は税を払う側ではなく税を使う側であること」を露呈したという点で、選挙結果は一種の納税者の反乱だったという一面もあると見ています。

衆参ねじれ現象に関しては、与党も弱気になる必要はありません。民主制の本旨に則り徹底的に議論や討論をすればいいだけのことです。むしろ与党の圧倒的過半数の状況下で頻繁に行われてきた「強行採決」(=実質独裁制と変わらない)の方が問題だと思います。

衆参ねじれ現象は、民主制のプロセスでの徹底した討論が行われ易くなった(その結果本当に信頼できる政治家は誰かを見極め易くなる)という点では、歓迎すべき現象だと思います。

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