ヘッジ取引の損益
租税法解説ーヘッジ取引の説明とその損益に関わる法人税法上の取扱いを説明しています。
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企業は事業活動を行っていくうえで、将来生じる恐れのある損に対して適正なリスク・ヘッジをする必要があります。ヘッジ取引の古典的例示が判りやすいと思います。トウモロコシの生産者が1ブッシェルあたり最低$5で売れば採算がとれますが、売値がそれ以下になると採算が成り立たない時、種蒔き時のトウモロコシの価格が1ブッシェルあたり$7であった場合、トウモロコシの生産者は先物取引でトウモロコシを売り、収穫時に売り契約を手仕舞いします。もし、収穫時の時価が$4であった場合、トウモロコシの生産者は、$4でトウモロコシを売却しますが、売り契約を手仕舞いした結果、$3の利益が出ます。結果として、自分の生産したトウモロコシは$7で売れたと同じ結果となります。この例では、先物取引で行った1ブッシェルあたり$7の売り契約がヘッジ取引となります。 デリバティブ取引の損益は時価評価して、評価損益は益金あるいは損金に計上することが求められていますが、現物資産の取引が行われる前に、決算期がきてデリバティブ取引の損益だけが益金あるいは損金に計上されるとヘッジの意味を成さなくなります。この問題の対応を会計および税務で考えています。 |
ヘッジ会計
デリバティブ取引の多くはその性質から、ヘッジ手段として利用されます。従って、ヘッジ手段として利用されるデリバティブ取引について、時価評価される一方、ヘッジ対象である現物資産について原価評価されることによる損益の計上時期のミスマッチを補正する等のために、以下で述べるヘッジ会計が認められることになりました(金融商品会計基準第五)。
(1)ヘッジ取引の意義
ヘッジとは、有価証券、外貨建借入金など現物資産・負債が抱える価格・金利・為替の変動リスクを、デリバティブ取引等を使って、回避・軽減することです。ヘッジには、相場変動リスクをヘッジする取引と、金利変動リスクに対しキャッシュ・フローを固定するヘッジ取引があります。
ヘッジの対象となる、リスクにさらされている現物資産・負債のことをヘッジ対象といい、ヘッジの際に用いるデリバティブ取引をヘッジ手段といいます。
(2)ヘッジ会計の意義
ヘッジ会計とは、ヘッジ取引のうち一定の要件を満たすものについて、ヘッジ対象に係る損益とヘッジ手段に係る損益を同一の会計期間に認識し、ヘッジの効果を会計に反映させるための特殊な会計処理をいいます。
(3)ヘッジ会計の方法
ヘッジ会計の方法には以下の二つの方法があります。
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繰延ヘッジ |
原則的な方法 |
時価評価されているヘッジ手段に係る損益または評価差額を、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで資産または負債として繰り延べる方法 |
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時価ヘッジ |
例外的な方法 |
ヘッジ対象である資産又は負債に係る相場変動等を損益に反映させることによって、その損益とヘッジ手段に係る損益とを同一の会計期間に認識する方法(時価ヘッジは、ヘッジ対象の時価評価が可能な場合にのみ採用可能)(*1) |
(*1)現時点では時価ヘッジ会計は、その他有価証券をヘッジ対象とする場合以外は認められていない。なお、ヘッジ対象たるその他有価証券の時価変動要因のうち特定のリスク要素(金利・為替・信用等)のみをヘッジの目的としているときは、そのリスク要素の変動に係る時価の変動額を当期の損益として計上し、それ以外の部分は資本直入をする(実務指針160、185)。
(4)ヘッジ会計の要件
ヘッジ会計は、ヘッジ取引全てに適用されるわけではなく、以下のような要件を充足する場合に適用されます。
1. ヘッジ取引開始時にヘッジ取引が企業のリスク管理方針に従ったものであることが客観的に認められること
i) 当該取引が企業のリスク管理方針に従ったものであることが、文書により確認できること
ii) 企業のリスク管理方針に関して明確な内部規定及び内部統制組織が存在し、当該取引がこれに従って処理されることが期待されること
2. ヘッジ取引開始時以降において、ヘッジ対象とヘッジ手段の損益が高い程度で相殺される状態またはヘッジ対象のキャッシュ・フローが固定され、その変動が回避される状態が引き続き認められることによって、ヘッジ手段の効果が定期的に確認されていること
税務上の取扱い
ヘッジ会計を適用している場合、繰延ヘッジ・時価ヘッジともに、会計と税務で取扱いに大きな相違はありません。留意すべき点は、上記(4)ヘッジ会計の要件の有効性の判定です。とかくヘッジ取引と言いながら、実際はデリバティブ取引による投機である場合が間々あります。そのような擬似ヘッジ取引は認められません。
デリバティブ取引による損益と現物取引での決済差額との割合がおおむね80%から125%の間にある場合は、ヘッジ対象とヘッジ手段の損益が高い程度で相殺される状態にあると看做されます。
ヘッジ取引の損益に関わる条文を下記に引用いたします。
(繰延ヘッジ処理による利益額又は損失額の繰延べ) |
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第六十一条の六 |
内国法人が次に掲げる損失の額(以下この項及び第三項において「ヘッジ対象資産等損失額」という。)を減少させるためにデリバティブ取引等を行つた場合(次条第一項の規定の適用がある場合を除くものとし、当該デリバティブ取引等が当該ヘッジ対象資産等損失額を減少させるために行つたものである旨その他財務省令で定める事項を財務省令で定めるところにより帳簿書類に記載した場合に限る。)において、当該デリバティブ取引等を行つた時から事業年度終了の時までの間において当該ヘッジ対象資産等損失額を減少させようとする第一号に規定する資産若しくは負債又は第二号に規定する金銭につき譲渡若しくは消滅又は受取若しくは支払がなく、かつ、当該デリバティブ取引等が当該ヘッジ対象資産等損失額を減少させるために有効であると認められる場合として政令で定める場合に該当するときは、当該デリバティブ取引等に係る利益額又は損失額(当該デリバティブ取引等の決済によつて生じた利益の額又は損失の額(第四項において「決済損益額」という。)、第六十一条の四第一項(有価証券の空売り等に係る利益相当額又は損失相当額の益金又は損金算入等)に規定する利益の額又は損失の額に相当する金額、前条第一項に規定する利益の額又は損失の額に相当する金額及び第六十一条の九第二項(外貨建資産等の期末換算差額の益金又は損金算入)に規定する差額に相当する金額をいう。)のうち当該ヘッジ対象資産等損失額を減少させるために有効である部分の金額として政令で定めるところにより計算した金額は、第六十一条の四第一項、前条第一項及び第六十一条の九第二項の規定にかかわらず、当該事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入しない。 | ||
一 |
資産(第六十一条第一項(短期売買商品の譲渡損益及び時価評価損益の益金又は損金算入)に規定する短期売買商品及び第六十一条の三第一項第一号(売買目的有価証券の評価益又は評価損の益金又は損金算入等)に規定する売買目的有価証券を除く。次号において同じ。)又は負債の価額の変動(第六十一条の九第一項第一号ロに規定する期末時換算法により第六十一条の八第一項(外貨建取引の換算)に規定する円換算額への換算をする第六十一条の九第一項各号に掲げる資産又は負債(次号において「期末時換算資産等」という。)の価額の外国為替の売買相場の変動に基因する変動を除く。)に伴つて生ずるおそれのある損失 | ||
二 |
資産の取得若しくは譲渡、負債の発生若しくは消滅、金利の受取若しくは支払その他これらに準ずるものに係る決済により受け取ることとなり、又は支払うこととなる金銭の額の変動(期末時換算資産等に係る外国為替の売買相場の変動に基因する変動を除く。)に伴つて生ずるおそれのある損失 | ||
2 |
前項に規定するデリバティブ取引等とは、次に掲げる取引(第六十一条の八第二項の規定の適用を受ける場合における同項に規定する先物外国為替契約等に基づくもの及び前条第一項に規定する財務省令で定める取引を除く。)をいう。 | ||
一 |
前条第一項に規定するデリバティブ取引 | ||
二 |
第六十一条の二第十九項(有価証券の空売りをした場合の譲渡利益額又は譲渡損失額の計算)に規定する有価証券の空売り並びに同条第二十項に規定する信用取引及び発行日取引 | ||
三 |
第六十一条の九第二項に規定する外貨建資産等を取得し、又は発生させる取引 | ||
3 |
内国法人が、適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格事後設立(第六十一条の八までにおいて「適格組織再編成」という。)により被合併法人、分割法人、現物出資法人又は事後設立法人(第六十一条の八までにおいて「被合併法人等」という。)からヘッジ対象資産等損失額を減少させるために行つた第一項に規定するデリバティブ取引等(以下この項において「デリバティブ取引等」という。)に係る契約の移転を受け、かつ、当該適格組織再編成により第一項第一号に規定する資産若しくは負債(当該デリバティブ取引等によりヘッジ対象資産等損失額を減少させようとするものに限る。)の移転を受け、又は同項第二号に規定する金銭(当該デリバティブ取引等によりヘッジ対象資産等損失額を減少させようとするものに限る。)を受け取り、若しくは支払うこととなつた場合(同項の規定の適用を受けた当該適格組織再編成に係る被合併法人等が当該適格組織再編成前にヘッジ対象資産等損失額を減少させるために行つたデリバティブ取引等の決済をしていた場合には、当該適格組織再編成により当該被合併法人等から同項第一号に規定する資産若しくは負債(当該デリバティブ取引等によりヘッジ対象資産等損失額を減少させようとしていたものに限る。)の移転を受け、又は同項第二号に規定する金銭(当該デリバティブ取引等によりヘッジ対象資産等損失額を減少させようとしていたものに限る。)を受け取り、若しくは支払うこととなつた場合)において、当該被合併法人等が当該契約の移転をしたデリバティブ取引等(当該決済をしていた場合には、当該決済をしたデリバティブ取引等。以下この項において同じ。)につき第一項に規定する旨その他同項に規定する事項を同項に規定する財務省令で定めるところにより帳簿書類に記載していたときは、当該適格組織再編成の日の属する事業年度以後の各事業年度におけるこの条の規定の適用については、当該内国法人が当該適格組織再編成により移転を受けた同項第一号に規定する資産若しくは負債又は当該適格組織再編成により受け取り、若しくは支払うこととなつた同項第二号に規定する金銭に係るヘッジ対象資産等損失額を減少させるために当該デリバティブ取引等を行い、かつ、当該記載をしていたものとみなす。 | ||
4 |
決済損益額のうち第一項に規定する政令で定めるところにより計算した金額の翌事業年度以後の各事業年度における処理その他前三項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。 | ||
(時価ヘッジ処理による売買目的外有価証券の評価益又は評価損の計上) |
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第六十一条の七 |
内国法人がその有する売買目的外有価証券(第六十一条の三第一項第二号(売買目的有価証券の評価益又は評価損の益金又は損金算入等)に規定する売買目的外有価証券をいう。以下この条において同じ。)の価額の変動(第六十一条の九第一項第一号ロ(外貨建資産等の期末換算差益又は期末換算差損の益金又は損金算入等)に規定する期末時換算法により次条第一項に規定する円換算額(以下この項において「円換算額」という。)への換算をする第六十一条の九第一項第二号ロに掲げる有価証券の価額の外国為替の売買相場の変動に基因する変動を除く。)により生ずるおそれのある損失の額(以下この条において「ヘッジ対象有価証券損失額」という。)を減少させるためにデリバティブ取引等(前条第二項に規定するデリバティブ取引等をいう。以下この条において同じ。)を行つた場合(当該売買目的外有価証券を政令で定めるところにより評価し、又は円換算額に換算する旨その他財務省令で定める事項を財務省令で定めるところにより帳簿書類に記載した場合に限る。)において、当該デリバティブ取引等を行つた時から事業年度終了の時までの間に当該売買目的外有価証券の譲渡がなく、かつ、当該デリバティブ取引等が当該ヘッジ対象有価証券損失額を減少させるために有効であると認められる場合として政令で定める場合に該当するときは、当該売買目的外有価証券の価額と帳簿価額との差額のうち当該デリバティブ取引等に係る前条第一項に規定する利益額又は損失額に対応する部分の金額として政令で定めるところにより計算した金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額又は益金の額に算入する。 | ||
2 |
内国法人が、適格組織再編成により被合併法人等からヘッジ対象有価証券損失額を減少させるために行つたデリバティブ取引等に係る契約の移転を受け、かつ、当該適格組織再編成により売買目的外有価証券(当該デリバティブ取引等によりヘッジ対象有価証券損失額を減少させようとするものに限る。)の移転を受けた場合(前項の規定の適用を受けた当該適格組織再編成に係る被合併法人等が当該適格組織再編成前にヘッジ対象有価証券損失額を減少させるために行つたデリバティブ取引等の決済をしていた場合には、当該適格組織再編成により当該被合併法人等から売買目的外有価証券(当該デリバティブ取引等によりヘッジ対象有価証券損失額を減少させようとしていたものに限る。)の移転を受けた場合)において、当該被合併法人等が当該契約の移転をしたデリバティブ取引等(当該決済をしていた場合には、当該決済をしたデリバティブ取引等。以下この項において同じ。)につき前項に規定する旨その他同項に規定する事項を同項に規定する財務省令で定めるところにより帳簿書類に記載していたときは、当該適格組織再編成の日の属する事業年度以後の各事業年度におけるこの条の規定の適用については、当該内国法人が当該適格組織再編成により移転を受けた売買目的外有価証券に係るヘッジ対象有価証券損失額を減少させるために当該デリバティブ取引等を行い、かつ、当該記載をしていたものとみなす。 | ||
3 |
第一項に規定する政令で定めるところにより計算した金額の翌事業年度における処理その他前二項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。 | ||
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