21世紀の税制改革ー我々は近視眼的過ぎないか!その5(まとめ)
21世紀の税制改革 - あるべき税制を観念的に議論しても有効な解決の糸口は見えないと考え、出来るだけ客観的データに基づいてあるべき税制を検討します。本テーマのブログ記事5回目(まとめ)です。
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左記の表では、国債の残高の推移を折れ線グラフで示しています。平成19年度末(見込み)の残高は普通国債が547兆円、財政融資資金特別会計国債が143.2兆円あります。つまり、国債の残高は合計690.2兆円です。その他にも国の借入金等が202兆円あまりあります。その結果、国債・借入金残高は892.2兆円と天文学的数値です。 |
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平成15年の国債の残高は、普通国債が457兆円、財政融資資金特別会計国債が91.7兆円です。その時点での国債・借入金残高は703兆円でした。僅か4年間で200兆円近くも国の借金が増えています。穴の空いた桶状態です。棒グラフは、一般会計と特別会計の歳出の推移を示しています。一般会計の歳出の半分以上が特別会計に振り替えられています。その結果、毎年200兆円近い金額が特別会計の歳出となっています。 | |
特別会計というブラックボックスに200兆円という多額の金額が流れ込み、国民の知らないところで費やされています。特別会計を運営する事業が如何に杜撰に営まれているかに関して記述した記事(川本裕子氏による「経済を見る眼」週刊東洋経済2007年11月10日号)を引用させてもらいます。「・・・社会保険は官の事業の現場だが、そこには社会主義的な非効率や無責任が蔓延し、国民の大事な資産を預かり管理するという緊張感が感じられなかった。・・・職員団体の関心は自らの待遇改善に偏り、内向きで規律の緩んだ職場を作り上げた。・・・情報開示の徹底による透明性と、現代的なマネジメントの導入による説明責任の強化が今後の改革の柱だ。」
また、11月15日日本経済新聞社説「歳出改革を無視した道路財源の温存案」を下記に添付します。この社説を読むと、特別会計というブラックボックスが一人歩きしていることが分かります。
最近よく言われているプライマリバランスとは、国の借金が増えない状態を言います。平成19年度の一般会計の公債発行額は25.4兆円です。つまり、税収が4兆円前後増えれば、それは歳入増となるため、公債発行額を4兆円減らすことが出来ます。その結果、公債発行額21兆円で済みます。そうすると国債費21兆円とバランスがとれ国の借金増加にストップがかかります。景気回復により税収が平成14年以降増えています。この好景気が数年続けば税収の増加によりプライマリバランスは達成できます。しかし、690.2兆円の国債の残高は減りません。
そこで注意すべき点は、プライマリバランスの議論を少子高齢化と若年層の格差問題と混同すべきでないことです。プライマリバランスは財政再建の道標に過ぎません。財政再建は、特別会計から無駄をなくすことで可能になると思料いたします。しかし、少子高齢化と若年層の格差問題は、現状の人口構成、所得構成がドラスティックに変更する事態における急激な歳出の増加をもたらします。先ず、財政再建について検討いたします。OECD21カ国のデータを分析した結果、財政再建は増税ではなく、歳出削減および税の自然増が効果的であることを実証的分析が証明しています。国民は直感的に歳出削減の余地が未だあるのではないかと考えています。そのためには連結ベース予算編成をすることが大事と考えます。
企業会計が単体決算の時代は、子会社を利用した粉飾決算が日常茶飯事でした。それが連結決算に制度が代わった結果、子会社を利用した粉飾決算はなくなりました。
国の予算も単体決算(一般会計)から子会社(特別会計)も含めた連結決算(一般会計と特別会計の歳入・歳出を合算して、重複計上されている歳入・歳出を相殺処理したもの)で予算編成することが急務と解します。連結ベース予算編成をすることで、国全体の歳入・歳出の内容が国民に詳らかされ、不急不要な事業が予算から削られます。209兆円の国家予算の10%ぐらい歳出カットすることは可能と考えます。財政再建は、予算の適正開示と抵抗勢力(族議員、官僚)を駆逐することで達成可能です。
財政再建の努力が見られない状態で、少子高齢化と若年層の格差問題がもたらす急激な歳出の増加を補填するための消費税税率のアップの議論は、木を見て森を見ない議論に思われます。
11月15日付け日本経済新聞社説「歳出改革を無視した道路財源の温存案」
ある程度予想されたとはいえ、小泉政権以来の改革方針をかくも無視した役所の案も珍しいだろう。国土交通省が13日に自民党の道路特定財源プロジェクトチームに示した、2008年度から10年間にわたる道路の中期計画素案のことである。
彼らが判断した「真に必要な道路」の事業費は、高速道路の料金引き下げなどを含め、10年間で合計68兆円以上。過去5年間の道路投資額は年平均で6兆9000億円で、10年分なら「68兆円以上」にぴたりと合う。国交省は揮発油税や自動車重量税など道路財源の暫定税率(上乗せ税率)の10年延長も08年度税制改正で追加要望した。
国の道路歳出は35兆5000億円で、道路財源の税収見込み額である31兆―34兆円を上回る。安倍晋三前首相が昨年12月に「一般財源にする」と言った余剰額は1銭も生じない。安倍内閣から在任の冬柴鉄三国土交通相は「(税収が余る)すき間はない」と明言した。
06年に閣議決定した「骨太の方針」に沿い、公共投資は来年度3%、その後も11年度まで毎年1―3%削減する。現状維持の中期計画案はこの決定への配慮を全く欠く。
わたしたちは道路特定財源をできるだけ幅広く、環境対策など何にでも使える一般財源に変えるよう求めてきた。苦しい財政を考えれば揮発油税などの暫定税率を維持するのはやむを得ないとしても、一般財源化の余地を一切認めず、税収を道路関連の特権として事実上、温存させることは断じて容認できない。
改革路線は福田康夫首相のもとで逆走し始めたとの疑念を強めざるを得ない。道路財源は01年に小泉純一郎元首相が「見直しの方向で検討したい」と表明、安倍前首相も昨年秋の就任直後に一般財源化に強い意欲を示していた。国交省素案は道路族による改革の骨抜きを象徴するものになる。
確かに地方経済の疲弊にどう対処するかは難しい課題だ。だが社会保障費などがさらに膨らむ中で、旧来の「金額ありき」で道路を造り続けることを本当に民意が求めているのか。地方自治体には既存道路の維持や補修が重荷となり、新規事業への抵抗感を訴えるところもある。
国交省素案は地域の自立、安全・安心など首相が好む言葉を並べ、道路事業の採択に数値基準を設けた。工夫の跡はあっても、帳尻合わせに変わりはない。政府・与党が年末にまとめる道路中期計画が素案の追認に終わるなら、福田政権の改革姿勢への失望感は決定的になろう。
コメント
特別会計の無駄について日本経済新聞が12月11日の朝刊の社説でコメントしています。興味深い記事ですので引用します。
特別会計の無駄こそが“埋蔵金”だ
国民の監視が届きにくい特別会計に「埋蔵金」はあるのか。予算編成終盤に、自民党内で論争が起きている。特別会計の積立金を取り崩し、苦しい財政のやり繰りに使う構想を巡る意見対立だが、より重要なのは特別会計の歳出の無駄を徹底して排除することだ。論争を契機にその本質論に迫ってほしい。
「埋蔵金」は「社会保障制度の維持には消費税の増税が避けられない」と主張する自民党の財政改革研究会が、先月の中間報告で民主党の批判に使った。補助金の交付金化や特殊法人・特別会計の廃止で多額の財源ができるとした民主党の政権公約を、根拠のない「霞が関埋蔵金伝説」だと非難した。
これに民主党でなく自民党内から反発が起きた。増税に反対し、経済成長による税収増で財政を立て直すべきだとする中川秀直元幹事長が、財政融資資金(旧資金運用部)と外国為替資金の特別会計にそれぞれ20兆円近い繰越利益があるとして「埋蔵金は実在する」と指摘した。09年度の基礎年金の国庫負担引き上げ財源に活用する考えも示した。
特別会計で余剰の積立金を活用する考えは妥当だが、収入は一度限りであり、経常支出の財源に充てるのは適切ではない。まずは今年度末で約550兆円にのぼる国債残高を減らし、国債の利払い負担を減らすことに使うべきだ。
政府は06年度予算ですでに財政融資資金特別会計の積立金のうち12兆円を国債の償還にあてた。今年度に施行した「特別会計に関する法律」も余剰金を国債償還に回す規定を設けており、政府は08年度も数兆円を償還資金とする方針。民間企業が有利子債務の軽減を経営の最優先課題にするのと同じで、債務削減の努力は大いに進めてほしい。
だが、本来必要なのは、特別会計の無駄を排除したり、不要な補助金を減らしたりして財政のリストラを一段と進めることである。塩川正十郎元財務相が「母屋(一般会計)でおかゆをすすっている時に、子供が離れ座敷(特別会計)ですき焼きを食べている」と例えたように、各省庁が管理する特別会計の収支構造には国会などの監視が効きにくい。05年末に決まった特別会計改革も中途半端だった。
道路特定財源の改革が腰砕けとなり、独立行政法人の改革に各省が猛反発するなど、身を削られることに対する霞が関の抵抗は相変わらずだ。増税を求める前に、改めて特別会計の無駄を洗い直すべきだ。まだ「埋蔵金」は埋まっているはずだ。
投稿者: 村田守弘 | 2007年12月11日 20:46