2012年3月アーカイブ

日本文明の没落について!

| コメント(1)

 1975年に文藝春秋に掲載された論文「日本の自殺」が、37年後に【予言の書「日本の自殺」再考】の題(文藝春秋2012年3月号)で再掲載されました。この論文が掲載された1975年は、当に高度成長の右肩上がりの時代でした。しかし、この論文は、「ギリシャ・ローマの没落をはじめとしてほとんどすべての文明の没落は社会の衰弱と内部崩壊を通じての『自殺』だったとし、現在(1975年当時)の日本の間違った繁栄によって、道徳は荒廃し、人心はすさみ切り、日本人は病み個性を失って呆然と立ち尽くし、自壊に向かっている」と論じています。

 この論文の指摘している部分の多くが今の日本で起こっています。機会あれば、是非、この論文を読んでいただきたいです。

 過去の文明の没落の例が教える教訓がこの論文の最後に記載されています。この部分を読むだけでも最悪の事態を避けるための知恵が得られるものと思います。ご参考になれば幸いです。

【第一の教訓】諸文明の没落の歴史からの第一の教訓は、国民が狭い利己的な欲求の追求に没頭して、みずからのエゴを自制することを忘れるとき経済社会は自壊していく以外にないということである。消費者にせよ、勤労者にせよ、あるいはまた政治家にせよ、経営者にせよ、利己的な衝動に押し流されることなく、自己抑制しつつ、どこかに調和点を見出そうとすることを学ばない限り、際限のないエゴは放縦と堕落に至るほかはない。

【第二の教訓】第二の教訓は、国際的にせよ、国内的にせよ、国民がみずからのことはみずからの力で解決するという自立の精神と気概を失うとき、その国家社会は滅亡するほかはないということである。福祉の代償の恐ろしさはまさにこの点にある。

【第三の教訓】第三の歴史の教訓は、エリートが精神の貴族主義を失って大衆迎合主義に走るとき、その国は滅ぶということである。政治家であれ、学者であれ、産業人であれ、あるいは労働運動のリーダーであれ、およそ指導者は指導者たることの誇りと責任とをもって言うべきことを言い、なすべきことをなさねばならない。たとえ、それがいかに大衆にとって耳の痛いこと、気に入らないことであったとしても、またその発言と行為ゆえに孤立することがあったとしても、エリートは勇気と自信をもって主張すべきことを主張せねばならない。

【第四の教訓】没落の歴史からの第四の教訓は、年上の世代は、いたずらに年下の世代にこびへつらってはならないということである。若い世代は、古い世代とのきびしいたたかいと切磋琢磨のなかにはじめてたくましく成長していくものである。古い世代がやたらに物わかりよくなり過ぎ、若者にその厚い胸を貸して鍛えてやることを忘れるとき、若者はひよわな精神的「もやしっ子」になるほかはない。

【第五の教訓】没落の歴史からの第五の教訓は、人間の幸福や不幸というものが、決して賃金の額や、年金の多い少ないや、物量の豊富さなどによって計れるものではないという極く当り前のことである。人間は物欲を満たす動物と考える限り、欲望は際限なく広がり、とどまる所を知らないであろう。いかなる欲望充足の努力も、永遠にこの肥大化する欲望に追いつくことはできず、満足することがない。それは砂漠の“逃げ水”のように、追っても追ってもつかまえることはできない。そしてこの欲望の肥大化のサイクルから解放されて自由にならない限り、人間はつねに不平不満の塊りとなり、欲求不満にさいなまれ続け、心の安らぎを得ることがないであろう。

 

*****

歴史的事実に照らしてみるとき、確かに第二次大戦後の日本は物質的にはめざましい再建をなし遂げたが、精神的には未だにほとんど再建されてはいない。道徳は荒廃し、人心はすさみ切って、日本人の魂は病んでいる。日本はその個性を見失ってただぼう然と立ちつくしたままである。未来の歴史家はこの時代をどう見ることになるのであろうか。そして生まれくる若き未来の世代はこの病める日本をどうしようとするのであろうか。【予言の書「日本の自殺」再考】より抜粋(文藝春秋2012年3月号)

 

特に「第二の教訓」と「第三の教訓」は耳が痛いです。働かなくても食べていける社会福祉制度、競争を避ける悪平等、エリートの排除が社会の風潮となると、人の活力は失われ生きようとする意志が急速に減退すると示唆しています。当に、今の日本の病理を突いているようです。

近くて遠い中国について!

| コメント(2)

 先週、上海、杭州(くいしゅう、Hangzhou)、無錫(むしゃく、Wuxi)に出張してきました。それぞれの位置関係は、上海を正三角形の底辺の右、杭州を底辺の左、無錫を頂点と考えると想像がつくと思います。正三角形の1辺の長さは150キロあまりあります。 

 北京がワシントンDCであれば、上海はニューヨークに該当します。上海は、当に中国経済の中心になります。人口は、出稼ぎ労働者を含めると2500万人を超えると言われています。人口の規模で言えば、東京の倍です。上海には10万人以上の日本人が滞在しているともいわれています。そして、上海の日本人学校の世界最大規模だそうです。杭州は、浙江省(せっこうしょう)の省都で、経済成長が著しい都市です。無錫は、多くの日本人にとって演歌『無錫旅情』で歌われた町にすぎないですが、改革開放以来、急激に工業が発展し、とりわけ日本企業の進出が多い都市です。

 

 今回の出張で感じたことがいくつかあります。

  •  中国はGDPで世界第2位であることを痛感!
  •  風水は中国人にとって守るべき生活の知恵!
  •  市民の生活は、映画「Always 三丁目の夕日」で描かれている昭和33年の日本!

 

中国はGDPで世界第2位であることの痛感

 上海から杭州、杭州から無錫、無錫から上海への移動は車でした。ビックリすることは、それぞれの都市を結ぶ高速道路の大部分が片側4車線だったことです。そして、道路を走行する車の種類を考えると経済活動は、日本とは比較にならないくらい活発でした。

 

風水は中国人にとって守るべき生活の知恵

 最近建てられた無錫市庁舎の前には大きな池があり、その奥の広々とした敷地に建物がありました。大きな池のある場所を選んで市庁舎が建てられたと思っていましたが、それは間違いで、市庁舎の建設にあたって風水の観点から人工池を作ったのでした。公的機関の建築物の建設において風水が尊重されるとは思いもよらなかったです。風水では、近隣の良い“気”をとりいれることによって建物の“気”はさらによくなっていくと考えており、中国人にとって風水は必要不可欠なもののようです。

 

市民の生活は映画「Always 三丁目の夕日」の日本

 デパートや大型ショッピングセンターはどんどん建設されていますが、市民生活の中心は、屋台や露店の入っている市場です。そこでは、生きた鶏が販売され、客の前で絞められるのです。上海の販売の伝統的チャネルとしてざら場があります。ざら場とは、映画「Always 三丁目の夕日」の舞台となった昭和30年代にあった何でも売っている駄菓子屋みたいな商店です。GDPで世界第2位ですが、庶民の生活のベクトルはかなり違ったところにありました。

 

*****

 中国は、時間的距離からすると東京・大阪間の2時間30分とほぼ同様です。そんな近いところに我々と異なる文化を持っている人々が住んでいること、そして、かなり元気に生きていることを痛感した出張でした。

 

会計士本書評2.JPG

 

 

富裕者層の所得税増税について

| コメント(1)

ブログ【みんなの税「社会保障と税の一体改革の提言」】に掲載した私の記事を転載いたします。

■消費増税やむなし 

消費増税は止むを得ないとの気持ちを多くの人々は考えていますが、無駄を省くという身を斬ることにおよび腰な野田政権の姿勢に対して多くの国民は批判的です。そこで俎上に上がってくる議論は、「金持ちにもっと課税しろ!」との議論です。私は、富裕者層の所得税増税に否定的ではないですが、金持ちにもっと課税して本当に財政再建になるのだろうかと疑問を持ちました。

 

■格差は拡大しているのか 

最近言われる格差社会についてですが、金持ちに富が集中して格差になっているのでしょうか?実際は違います。少子高齢化社会の下、高齢者世帯が増加すると所得ゼロの世帯も増加し、結果として、所得格差が大きく指標化されます。そのため貧富の格差が拡大しているという誤解が生じます。敢えて言えば、富裕層が増えているのではなく、貧困層が増えているのです。マスコミの報道は大衆迎合的です。本当に客観的データに基づいて議論しているか多いに疑問を持ちます。

 

■客観的データの分析に必要性 

そこで客観的データに基づいて議論してみたいです。

平成24年度の一般会計歳入歳出予算の概要を見ますと、歳出は90.3兆円です。歳入(我々の払う税金の総計)は46.1兆円です。公債発行額44.2兆円は歳入不足を借金で賄うために国債が発行されます。このような状態は、自分の収入の倍を消費している家計のようなものです。借金だけが雪だるま的に増えてしまいます。収入を増やすか、支出を減らすかしないと、早晩、解決しなければ自己破産になってしまいます。話を歳出、歳入に戻します。日本の財政再建をするためには、歳出をカットするか、歳入を増やすしか手はありません。歳入を増やすとは増税です。今話題の消費税の税収は、消費税(5%)で12兆円から13兆円です。消費増税1%の効果は、2.6兆円前後です。つまり、5%の消費税を10%にした場合、税収が12兆円から13兆円増えます。歳出が増えない前提(しがかし、この前提は今議論している「社会保障と税の一体化」の下では非現実的)であれば、歳入は58兆円になり、公債発行額32兆円まで減ります。

 

富裕者層の所得税増税は効果あるのか? 

それでは、富裕者層の所得税増税は、12兆円から13兆円の税収アップ効果があるのでしょうか?

結論を述べれば、答は“NO”です。

 

■実証的分析 

平成22年分民間給与実態統計調査(国税庁)によれば、年収2,500万円超の納税者は、9万8千人です。その所得合計額は約4兆円で、支払っている所得税は1兆1,000億円です。実効税率は27.69%です。所得税の最高税率は市町村民税を入れて50%ですが、50%の税率は年収が2,000万円を超えた部分に課されます。年収が2,100万円ですと、2,000万円までの所得に対する所得税の実効税率は14%ぐらいですので税額にすると280万円です。2,000万円を超えた部分の100万円に対して50%の所得税が課されますのでその税額は50万円です。その結果、2,100万円の所得に対する所得税は330万円になります。その時の実効税率は14.8%です。それを考えると年収2,500万円超のグループの実効税率27.69%は、それらのグループは応分の所得税負担をしている証左と考えられます。富裕税を導入して最高税率を60%にしても4,000億円程度の税の増収になるだけです。1兆円税収を上乗せするには、最高税率を75%ぐらいにする必要があります。最高税率を75%にすると優秀な人材は国外に流出していまうでしょう。人材なくして、成長なしです。

 

■所得税の全体を知ろう 

所得増税でもって財政再建の一助にしようと考えるのであれば、所得税の全体像を知る必要があります。

 

平成22年分民間給与実態統計調査(国税庁)によれば、給与所得者の納税者総数は3,755万人で、所得総額は170兆円です。支払っている所得税は7兆2,400億円です。その内訳ですが、高所得者グループの所得総額は約4兆円で負担した所得税は1兆1,000億円、中所得者グループの所得総額は38兆6,000億円で負担した所得税は3兆2,600億円、標準所得グループの所得総額は101兆円で負担した所得税は2兆4,500億円、低所得者グループの所得総額は26兆4,000億円で負担した所得税は4,200億円です。もう少し詳細に分析した表が下記の通りです。

 

問題は、160兆円以上の所得が実効税率で2.4%から8.4%しか負担していないのです。わが国所得税の問題は、当初の消費税の導入時、その後の税率の引き上げ時、所得税の減税、配偶者特別控除の創設等を実施したことです。つまり、消費税の導入・引き上げに対する国民の理解を得るために、所得税の減税や所得控除の拡大が行われました。その結果、今の所得税は、特定のグループに税負担させている適切さを欠いた状態です。所得税の課税ベースの見直しをして公正な税制を構築することが大事と思料します。国民の所得全体に対して税率1%で所得税を課せば、1兆6,000億円ぐらいの税収の効果があります。結果として増税になるにしても公正な税制であれば国民に受け入れられるものと信じます。富裕層だけでなく国民全体が税の追加負担をすれば、わずかな率での増税であっても、かなりの税の増収が可能となります。例えば、標準所得者グループに対して実効税率で約1%の増税(2.43%から3.42%)をすれば1兆円税収が増えます。

 

■所得税の抜本的改正が必要 

私は、富裕者層の所得税増税の導入に否定的ではないですが、金持ちに重税を課しても財政再建の効果は薄いのです。それより、特定のグループに税負担させている状態である所得税の抜本的改正が必要と考えます。貧困層(生活保護の対象となるグループ)以外の国民すべてが所得税の応分の負担をする必要があります。負担はできるだけ少なく、給付は限りなく多くという非常に利己的な社会の風潮がありますが、上記のような鳥瞰図的客観的データが提供されれば、理解が得られると考えます。

 

最近のコメント

アーカイブ

Powered by Movable Type 6.0.3