2012年9月アーカイブ

 

環境税とは!?

  

2012年10月1日に地球温暖化対策のための税(環境税)が導入されます。ガソリンは1リットルあたり0.25円の増税となります。環境税は、10月から税負担が1リットルあたり0.25円、14年4月に0.25円、16年4月に0.26円と3段階で増えます。完全実施後は1リットルあたり0.76円の環境税が課せられます。環境税は原油や天然ガスなどにかかる石油石炭税に一定額を上乗せするものです。

別の言い方をすれば、石油石炭税の増税です。環境税は、ガソリンの原料である原油のみならず、液化天然ガス、石炭に対しても課せられます。つまり液化天然ガス、石炭を原料とする電気代、ガス代に影響があります。2012年9月13日の日経朝刊の記事を抜粋します。

【10月1日導入の環境税が家庭用の電気代や都市ガスなど燃料費に上乗せされると、1世帯あたり年間1200円程度の負担増になる。産業用も含め全ての製品で価格に転嫁されると、負担増は1世帯平均で年5000円程度になる。原子力発電所の停止に伴うLNGの輸入増は一段の税負担増につながる。】

 

このような家計の負担増をもたらす環境税の目的について、説明が必要です。そこで、環境省の説明を抜粋します。 

  •  「環境税」は、税制による地球温暖化対策を強化するとともに、エネルギー起源CO2排出抑制のための諸施策を実施していく観点から導入するものです。具体的には、原油やガス、石炭といった全化石燃料に対して、CO2排出量に応じた税率を課すものです。地球温暖化の防止は人類共通の課題であり、あらゆる人に利益をもたらすものです。従って、そのための負担は、エネルギーを利用する方全体で幅広く公平に担っていくべきと考えています。
  • こうした「受益と負担」の関係に着目し、温室効果ガスの9割を占めるエネルギー起源CO2の原因をもたらす全化石燃料に対し、「広く薄く」公平にCO2排出量に応じた課税を行うこととしました。
  • 温室効果ガスを削減するという観点から、化石燃料やエネルギーに課税する環境税は、欧州を中心に導入が進められています。1990年には、世界で初めて、フィンランドにおいて、いわゆる炭素税が導入され、その後、スウェーデン、ノルウェー、デンマークといった北欧諸国やオランダで導入されました。現在では、ドイツ、イタリア、イギリス、フランス、スイスやカナダの一部の州でも課税されています。これらの国々では、それぞれの国の実情に応じた様々な方法で導入に至っています。

 

つまり、「京都議定書」で定められたCO2削減対策の一環として環境税が導入されました。しかし、経団連は、環境税を導入しなくてもCO2削減対策は十分とれるとの立場をとっています。2006年ですが経団連は、環境税のもたらす悪影響についてまとめた資料を作成しているので抜粋します。

悪影響1:家庭と企業にダメージ

「環境税」導入によるさらなるコスト増は、企業のみならず、国民全体を苦しめます。その上、経済成長を促進し、わが国経済の国際競争力を強化しなければならない中、その流れを妨げ、逆行させるおそれがあります。

原油価格の上昇はすでに社会全体に影響を与えています。さらに「環境税」が導入されれば、家庭や企業をいっそう苦しい立場に追い込みます。

悪影響2:企業の自主的な取り組みの基盤を阻害

「環境税」の導入は、日本経団連の「環境自主行動計画」の目標に向けて、中長期的視野に立ち、設備投資などに多額のコストをかけてきた企業に対してさらなる負担を強いるものです。「環境税」は企業の設備投資や研究開発の原資を奪い、これまで大きな成果をあげてきた自主的な取り組みの基盤を損ねます。今後、エネルギー効率の高い機器・設備の普及と置き換わりが進めば、2020年には世界全体で約37億トンのCO2排出を抑制できる可能性もあります。

悪影響3:地球規模での温室効果ガスが増大

わが国のエネルギー効率は世界最高水準にあります。他のどこの国に生産が移転しても、温室効果ガスの排出量増大につながります。

「環境税」導入により、わが国よりエネルギー効率が低く、「環境税」のない近隣諸国での生産活動が増えれば、結果的に地球規模での温室効果ガスの排出量増大と国内産業の空洞化を引き起こすおそれがあります。

 

原子力発電所の停止に伴うLNGの輸入増は一段の環境税の負担増につながることを考えると、私見ですが、「今、環境税か!?」が率直な意見です。

今から65年あまり前に伊丹万作氏が書いた記事「戦争責任者の問題」(雑誌『映画春秋』創刊号 昭和21年8月)で、彼は“だまされるということもまた一つの罪である”と述べています。当時は、第二次世界大戦に続いて原爆投下されました。

東日本大震災に続いて原発事故に遭った今の我々がおかれている精神状況と合い通じるものがあります。原発事故の後、「原発安全神話」を信じた多くの人々は、だまされたという感情と抱いています。この“だまされた”という感情は、戦争直後の日本人の多くの人が抱いた感情です。

伊丹万作氏の「戦争責任者の問題」を読んで、“だまされるということもまた一つの罪である”という彼の意見は傾聴に値すると考えました。そこで彼の記事を添付ファイルとしてアップロード (クリックすると当該記事がよめます)しました。

ご一読いただけると幸いです。

TPP参加日本の選択

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日経朝刊のコラム:経済教室で「TPP参加日本の選択」という記事が2012年8月27日から3回の連載で掲載されました。第一回目は東京大学教授中川淳司氏で、第二回目は一橋大学教授石川城太氏で、最終回は青山学院大学教授岩田伸人氏でした。これらの記事は当該先生の名前の部分をクリックすればアップロードされます。 

「TPP参加日本の選択」という興味津々の議題ですが、多くの人にとって先生方の記事の内容から全体像を理解することは難しいと思います。本ブログ記事では、やや独断と偏見のきらいはありますが、これらの記事のエッセンスの抽出を試みたいです。

 

 農業問題について

昨年11月の時事通信の世論調査によれば、「日本もTPPの交渉に参加すべきだ」が52・7%、「参加すべきでない」が28・8%。今年7月の調査では「参加すべきだ」が57・6%、「参加すべきでない」が21・7%だった。反対グループは、大きく次に分類されるだろう。既得権益の保護派(農業関係者など)、反グローバル派、反米派、その他(食の安全を危惧するグループなど)である。ところが、昨年11月の時点では国会議員の半数近くがTPPに反対の立場をとっており、現在も根強い反対論がある。国会議員の反対の多くは、選挙基盤が農協、農家にあるためである。

仮に、TPPで利益を得る人が1億人いて、その利益の合計が10兆円、一方で損失を被る人が200万人いて、その損失の合計が8兆円としよう。この場合、経済全体としては差し引き2兆円の利益になるのでTPPを進めた方がよいはずだが、実際にはなかなか実現しない。それは得するグループの利益が1人あたり10万円なのに対し、損するグループ(つまり、農業関係者)の損失は1人あたり400万円にもなるからだ。既得権益がなくなるグループの損害額は大きいので、政治的圧力をかけるインセンティブが大きくなる。09年の総選挙時に民主党がマニフェスト(政権公約)に記した戸別所得補償制度は現状の農業者の減反(作付け制限)が条件だ。農業者の生産意欲とは無関係に作付面積の規模に応じて、ほぼすべての販売農家に所得補償をする仕組みであることから「バラマキ」と称された。農業の近代化を図って第一次産業の復活を目指す視点が多くの政治家には欠如いる。生産意欲のない「バラマキ」ねらいの農家を守ること、選挙に勝つことしか考えていないのが、TPPに反対の立場をとる国会議員である。

仮に日本のTPP交渉参加が今年か来年としても、協定発効までに1-2年、さらに関税貿易一般協定(GATT)第24条に基づけばTPPの完成までに10年かかるので、TPPの完成時期は2024-25年となる。そのとき、農業の近代化を図って第一次産業の復活を目指す軌道に乗っているのだろうか。

 

TPPとは

米国はTPPを、広範囲かつ高水準の貿易と投資の自由化を実現する21世紀のFTAのモデルと位置づけている。TPPをテコに世界貿易秩序が再構築されつつあり、日本がそこから排除される不利益は計り知れない。まず、TPPのルールづくりに関与するという観点が必要だ。TPPは他のFTAよりも高度な自由化を目指しており、そのルール形成が今後のアジア太平洋地域の通商秩序を大きく左右する。従って、交渉時点でのルール形成への積極的な関与が日本にとって極めて重要である。

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