2013年1月アーカイブ

連載:富裕層の増税 第4回

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2012年11月21日より千倉書房HPにて『富裕層の増税』という連載記事を書いております。当ブログにおいてもその内容を紹介します。

 

米国の富裕層に対する増税(その2)

 

富裕層の増税第4回連載図表.png


 財政再建のための喫緊の課題のひとつであるブッシュ減税の失効が予定通りにされた場合、所得税の体系はブッシュ減税前の姿に戻ります(表の赤字の税率)。2013年1月には最高税率が35%から39.6%に引き上げられます。更に最低税率も10%から15%に引き上げられます。つまり、あらゆる所得階層が増税の対象になります。その結果、ブッシュ減税の失効による実質増税の額が2,200億ドル規模(約17.6兆円)になると推定されています。ブッシュ減税の失効は、税収の増大により財政赤字は急減する効果(崖から落ちるぐらい急激な効果)を持ちますが、あらゆる所得階層が増税の対象になる政策は、黒人層、ヒスパニック層の支持により再選されたオバマ大統領(民主党)には取り得ない選択になります。更に、世界経済の観点からは、経済的マイナス効果(増税により消費が冷え込み)を無視することは出来ません。 

 とれる選択肢は(1)ブッシュ減税を失効させない(現状の所得税の体系を維持)、あるいは(2)富裕層のみ増税させる案です。この点については次回検討したいです。

連載:富裕層の増税 第3回

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2012年11月21日より千倉書房HPにて『富裕層の増税』という連載記事を書いております。当ブログにおいてもその内容を紹介します。

 

米国の富裕層に対する増税(その1)

 

 2001年に行われたブッシュ減税(Bush Tax Cuts)により最高税率39.6%が35%に引き下げられました。その結果、現在の米国の所得税は、35%を最高税率とする6段階累進税になっています。日本には無い申告方式に夫婦合算申告(Married Filing Joint)があります。この夫婦合算申告での納税者は、日本の標準家庭(夫婦と子供2人)の納税者に近いと考えますので夫婦合算申告を前提に議論を進めます。

 

富裕層の増税第3回連載図表_fmWord.png

  上記税率は、総収入から社会保険料の掛け金、必要経費(Itemized deductions)、配偶者控除等を差し引いた金額(課税所得)に乗ぜられます。

 年収2,000万円以上の給与所得者を富裕層と考えますと、米国での課税所得$217,450(約1,740万円)の人の年収は、2,000万円を超えます(表の赤字の所得層)。課税所得$217,450(約1,740万円)から$388,350(約3,106万円)までの納税者は、税率33%が課されます。それ以上の所得の納税者は、最高税率35%が課されます。留意すべき点は、上記所得税に加えて州・地方政府税が加わります。やはり累進税率で最高税率は10%を超える場合が多いです。

 ブッシュ減税は2001年から続けられているので、多くの人は上記税率を減税税率ではなく、普通税率と考えています。しかし、米国は財政再建のためブッシュ減税の停止と強制的国家予算の削減が喫緊の課題となっています

連載:富裕層の増税 第2回

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2012年11月21日より千倉書房HPにて『富裕層の増税』という連載記事を書いております。当ブログにおいてもその内容を紹介します。 

有資産無所得は富裕層か 

 前回述べたように、投資可能資産は残っていても、現在は退職して所得が無く年金生活者である『有資産無所得』の一般的富裕層から多額の所得税を徴収することはあまり期待できません。しかし、彼等は所得がなくても消費はするので、消費税の支払の担い手になります。

 注意しなければならない点は、『有資産無所得』富裕層の消費増税の取扱いです。彼等を消費増税で税負担が重くなる低所得者として、優遇措置(例えば1万円の現金支給)の対象にすべきなのでしょうか?多いに疑問の湧くところです。

 所得税の観点からの富裕層とは、所有投資可能資産、つまり賃貸マンションや貸し駐車場などを現在どれだけ有しているかは関係ありません。あくまで現在稼いでいる(稼げる?)所得です。億単位の所得のある人は当然として、それ以下の所得のある人々も所得税の観点からは富裕層に含まれると考えます。「富裕層の増税」の議論は、アッパークラスではないがアッパーミドルクラスぐらいと思っている多くの人々が対象になるのです。

 日本の所得税法上、年収2,000万円以上の給与所得者は、確定申告することが求められることを考えると、私見ですが、所得税の観点からの富裕層とは、年収2,000万円以上の人々を指すと考えます。

富裕層の増税 第1回

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千倉書房HPにて『富裕層の増税』という連載記事を書いております。当ブログにおいてもその内容を紹介させていただきます。 

富裕層とは 

 最近になって裕福な人に対する増税議論が日米でかしましく議論されています。日本では、民主党税制調査会が11月7日、2015年から裕福な人の所得税率を引き上げたり、相続税がかかる人を増やしたりする方針を確認しました。それは、消費増税で低・中所得の人たちの税負担が重くなるのに合わせて、裕福な人への増税も必要と考えたからでした。

 一方、米国のオバマ大統領は、年間25万ドル以上(約2,000万円)の収入がある富裕層に対する「ブッシュ減税」を維持する法案には拒否権を発動する(つまり、裕福な人の所得税率を引き上げる)意向を示しています。予定通り増税が行われ支出削減が発動されると、6,000億ドル規模(約48兆円、日本の赤字国債の発行額に匹敵する額)の財政再建が進みますが、景気は真っ逆さまに落ちるが如く悪くなります。

 これらの増税議論が現実のものとなるのか、先送りされるのは不明ですが、財政再建を必要とする点においては日米同じですので、早晩、この議論は避けて通れないと考え、今回「富裕層の増税」という内容の連載をいたします。

 RBC Wealth Managementのワールド・ウェルス・レポート2012 (World Wealth Report 2012)による富裕層の定義は、主な居住用不動産、収集品、消費財および耐久消費財を除き、100万ドル(約8,000万円)以上の投資可能資産を所有する資産家としています。このレポートによると、世界の富裕層人口は約1100万人です。米国は第1位で約307万人、第2位は日本で182万人です。ちなみに、第3位はドイツで95万人です。

 約8,000万円以上の投資可能資産を所有する日本人が182万人居ること、そして、それらの人の多くは高齢者のグループに属する人々であることを考えると、ある意味では当然のような気がします。

 2012年現在65歳以上の日本人は、3,074万人です。つまり、日本人の4人に1人が65歳以上です。高齢者の年齢を60歳に下げると日本人の3人に1人が高齢者に該当します。団塊の世代がこれらのグループに入ります。それらの年代の多くの人は、日本の高度成長の中で企業戦士として頑張った人々です。典型的サラリーマンであれば、30年間働きコツコツ貯金することができ、更に定年の時には退職金を手にすることができました。恵まれた年代の人々です。毎年200万円貯金し、退職金を2,000万円もらえば、計算上、約8,000万円以上の投資可能資産を所有することができます。

 毎年200万円貯金し、退職金を2,000万円もらえた人が恵まれた世代の100人(3,074万人)の内6人(182万人)居ても不思議ではないと考えるからです。しかし、多くの高齢者は退職していますので、現在は年金生活者の人々が多くなっています。投資可能資産はあっても、所得があまり無い人々が今の日本の富裕層のかなりの部分を構成しています。

 今のような経済状況を前提にした場合、あと20年(60歳前後の男性の平均余命)もすれば日本の富裕層は激減するような気がします。

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