2013年2月アーカイブ

連載:富裕層の増税 第8回

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2012年11月21日より千倉書房HPにて『富裕層の増税』という連載記事を書いております。当ブログにおいてもその内容を紹介します。

 

日本の富裕層に対する増税(その3)

 

 社会保障・税一体改革大綱において、課税所得5,000万円超について45%の税率を2015年から新たに設け、適用するという政府案が提案されています。それでは、課税所得5,000万円以上の富裕層は何人ぐらいいるのでしょう!所得税対象の納税者数は約4,850万人です。納税者の10%の485万人が課税所得5,000万円以上の富裕層でしょうか?あるいは1%の48.5万人でしょうか?実は、約1万4千人です。つまり納税者約3,500人の中の1人が課税所得5,000万円以上の富裕層です。

 次に、課税所得5,000万円以上の富裕層の平均課税所得を検討してみます。2010年申告所得税での課税所得5,000万円超1億円以下の納税者の平均課税所得は6,430万円で、同課税所得1億円超の納税者の平均課税所得は2億1,947万円でした。この数値は、年末調整で税務計算の終わる納税者を含んでいません。しかし、統計的数値から判ることは、日本には統計上の数値を押し上げるようなスーパーリッチが居ないことを物語っています。

 増税効果を推定します。課税所得5,000万円以上の富裕層の平均課税所得金額を仮に1億円とした場合、富裕層(1万4千人)の課税所得の総額は1兆4,000億円です。しかし、これら富裕層の増税効果は、700億円に過ぎません。その計算は以下のとおりです。
増税効果(700億円)=課税所得総額(1兆4,000億円)×増税分(45%-40%)

 2012年の予算ベースでの所得税額は11.4兆円です。鳴り物入りで富裕層に対する増税をしても、増税効果が700億円であれば、歳入に与える影響は微たるものです。消費増税と比較してみると一目瞭然です。現行の消費税5%の税率が2014年4月に8%に、15年10月には10%に上がる予定です。計算上は、10兆円余りの消費税税収が消費税率10%になった時点で倍の20兆円になるはずです。つまり、10兆円の増税効果があります。増税の持つ効果を考えると富裕層に対する増税はあまり意味がないです。意味はないかもしれませんが、富裕層に対する増税は政治家がその気になれば、案外容易く導入できると考えます。金持ち叩きの施策は、マスコミ受けするし、多くの大衆は金持ちいじめに拍手を送るからです。

 しかし、自民党政権の下、富裕層に対する増税が導入されるかについて先行きが見えない状態になりました。財政再建のための選択肢は、増税・歳出削減か、経済の成長かのいずれかです。しかし、増税・歳出削減と成長は相いれないものです。増税すれば消費が減り、消費が減れば、景気が悪くなるという図式が成り立ちます。財政と成長の両立は非常に難しい道です。富裕層に対する増税は、安倍首相が考える経済成長重視路線とは相いれないと考えます。

連載:富裕層の増税 第7回

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2012年11月21日より千倉書房HPにて『富裕層の増税』という連載記事を書いております。当ブログにおいてもその内容を紹介します。

 

日本の富裕層に対する増税(その2)

 

 消費増税と共に実施すべき社会福祉の圧縮と効率化、政治家・官僚集団の改革という身を斬ることにおよび腰な政府の姿勢に対して多くの国民は批判的です。そこで俎上に上がってくる議論は、「金持ちにもっと課税しろ!」の要求です。そうすれば税収が上がるとの要求です。その要求に応える形で、社会保障・税一体改革大綱(2012年2月17日閣議決定)において、現行の所得税の税率構造に加えて、課税所得5,000万円超について45%の税率を2015年から設け、適用するという政府案が提案されています。

 現行の所得税の税率構造に加えて、課税所得5,000万円超について45%の税率を設けるという政府案が導入されると、所得税の税率は、45%を最高税率とする7段階累進税になります。

富裕層の増税第7回連載図表.png

 課税所得5,000万円に給与所得控除約450万円、社会保険料控除等222万円を足し込むと給与所得が推定できます。その推定によると、課税所得5,000万円の人の給与所得は約5,700万円になります。増税効果を知る意味で、留意すべき点は、上記表の税率は累進税率であることです。課税所得5,000万円を超えた部分に45%の税率で所得税が課されます。課税所得6,000万円の人の負担する増税金額は、50万円です。課税所得5,000万円の人は増税の影響はゼロです。

 課税所得6,000万円の人を例にして増税金額を算定します。累進税率ですから、45%の税率の課される所得は、5,000万円を超えた1,000万円(=6,000万円-5,000万円)です。1,000万円の所得に対する税は増税前であれば400万円(税率40%)です。増税後であれば450万円(税率45%)です。税金が増税により50万円増えています。しかし、「金持ちにもっと課税しろ!」と叫んだ人が溜飲を下げるような額ではありません。

 次回、課税所得5,000万円以上の富裕層をターゲットにした増税の効果について検討いたします。

連載:富裕層の増税 第6回

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2012年11月21日より千倉書房HPにて『富裕層の増税』という連載記事を書いております。当ブログにおいてもその内容を紹介します。

 

日本の富裕層に対する増税(その1)

 

 「日本の富裕層に対する増税」で利用している数値は、財務省の作成した「所得税の税率構造の見直しについて」(2012年11月9日)の中で使用されている数値を利用しております。また、日本の標準家庭(夫婦と子供2人)を前提に議論を進めます。

 現在の所得税は、5%から40%を最高税率とする6段階累進税になっています。  富裕層の増税第6回連載図表.png

 上記税率は、総収入から給与所得控除の金額、基礎控除、配偶者控除等を差し引いた金額(課税所得)に乗ぜられます。 

 年収2,000万円以上の給与所得者を富裕層と考えますと、年収2,000万円の人の課税所得は、1,508万円になります。それは、2,000万円から給与所得控除270万円、社会保険料控除等222万円(=社会保険料控除60万円+生命保険料控除10万円+配偶者控除38万円+扶養控除76万円+基礎控除38万円)を差し引いた金額が課税所得となるためです。上記表で判るとおり、彼の課税所得は1,800万円を超えていませんので、最高税率40%は課されません。課される税率は33%を限度とする累進税率になります。その結果、所得税は344万円になります。所得税344万円は、年収2,000万円に対して17.2%の負担です。多分、多くの人は、年収2,000万円の人は、自分の年収を課税所得と考える傾向があるのでもっと税金を払っていると感じるかも知れません。

 この誤解は、年収500万円前後の平均的サラリーマンになるとさらに顕著になると思います。年収500万円のサラリーマンの課税所得は、種々の控除を考慮すると124万円です。上記表でみると195万円以下ですので税率は5%です。つまり過半数の日本人は、最低税率でしか所得税を支払っていません。

 留意すべき点は、上記所得税に加えて市町村民税が課されることです。市町村民税の税率は一律10%です。ですから、所得税に市町村民税を加味した最高税率は50%になります。

連載:富裕層の増税 第5回

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2012年11月21日より千倉書房HPにて『富裕層の増税』という連載記事を書いております。当ブログにおいてもその内容を紹介します。

 

米国の富裕層に対する増税(その3)

 

 富裕層のみ増税させる案  

富裕層の増税第5回連載図表.png

今回の大統領選挙で中間所得層の取り込みが勝敗を分けたことから、あらゆる所得階層が増税の対象になる形でのブッシュ減税を失効させることは出来ません。そこで生まれてきた施策が富裕層のみ増税させる案です(表の赤字の所得層)。共和党は、富裕層のみ増税の案に反対しています。つまり、ブッシュ減税を失効させない案(現状の所得税の体系を維持)を支持しています。民主党を民主党(連合がスポンサー)、共和党を自民党(経団連がスポンサー)と読み替えると判り易いと思います。上院は民主党が過半数を押さえていますが、下院は共和党が過半数を押さえるというねじれ現象が起こっています。ですから、富裕層のみ増税の案が議会を通るか否かは余談を許さない状態です。

財政赤字解消のためには、富裕層のみ増税で充分と多くの人は考えていると思います。現時点では、富裕層のみ増税の額がいくらになるか詳らかにされていませんが、ブッシュ減税の失効による実質増税の額2,200億ドル規模(約17.6兆円)とは比較にならないくらい少ない金額になると推測します。税収の観点からはあらゆる所得階層に対する増税が最も効果的です(第四回参照)。「富裕層のみ増税」は、実の伴わない政治的プロパガンダの色彩が強いです。

財政再建のための選択肢は、増税・歳出削減か、経済の成長か、のいずれかです。しかし、増税・歳出削減と成長は相いれないものです。増税すれば消費が減り、消費が減れば、景気が悪くなるという図式が成り立ちます。財政と成長の両立は非常に難しい道です。

日本でも、財政再建のための選択肢として富裕層のみ増税の案を2013年度税制改正に盛り込む方向で検討されていると聞いています。次回は日本の富裕層のみ増税を議論したいです。

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