2013年8月アーカイブ

 日本はTPP交渉に当たり、コメ、麦、牛肉・豚肉、サトウキビなどの甘味資源作物、乳製品の「重要5品目」を関税撤廃の例外とするよう求める方針、つまり聖域とすることを決めています。しかし、交渉下手の日本政府が聖域を守れるのでしょうか? 

 

 この議論に入る前に日本の関税について、共通の理解を持つ必要があります。意外と思われるでしょうが、日本は低関税国のひとつです。多くの製品を輸入した時の関税はゼロか数パーセントです。乗用車、家電製品の関税はゼロ、化粧品のような嗜好品の関税もゼロ、美術品の関税もゼロです。農産物であっても、大豆の関税はゼロ、きゅうり、キャベツ、トマトの関税は3%、玉ねぎの関税は8%です。日本に輸入される大部分の製品、農産物の関税は、ゼロから10%の範囲内に収まります。 

 

 それでは、重要5品目の関税はどうなっているのでしょうか?コメは778%、麦は252%から256%、牛肉は38.5% 豚肉は平均50%前後、サトウキビなどの甘味資源作物は305%、乳製品218%から360%となっています。これら高関税品目は、すべて補助金行政によって支えられている農産物です。 

 

 コメの関税を例にとります。今、「ひとめぼれ」であれば10kg当たり3,800円から4,000円で買えます。これより安いコメが輸入されて市場に出るのを防ぐために高関税が課せられます。コメは輸入すると1kgあたり341円の関税が課せられます。10kg輸入すれば、3,410円の関税がかかります。輸入ひとめぼれの10kgの通関価格が1,000円であれば、関税3,410円が加算され輸入ひとめぼれの価格は、4,410円となり、誰も輸入しなくなります。このような輸入できないメカニズムにより、農家は守られ、結果、コメの自給率は100%近くになります。上記コメの関税778%は、コメの通関価格を500円前後に想定して算定されています。 

 

 農業の聖域を守るため関税の撤廃絶対反対と唱えている政治家でさえ、常識を超えた778%という関税は妥当でないと考えていると思います。しかし、農村利権と地域への利権誘導で選ばれた政治家は口が裂けても、関税撤廃は言えません。 

 

 日本は、明治維新の時の黒船来訪や敗戦時の進駐軍による統治などの「ガイアツ」を利用して国内の改革を進めてきました。日本の政治家は、改革を能動的にするのでなく受動的にしたがります。つまり、求める変革は「ガイアツ」を利用して行うのです。TPP交渉における米国という「ガイアツ」は強大です。交渉下手の日本が重要5品目の関税維持という聖域を守れないで、ある程度の譲歩をする可能性は大いにあります。しかし、この聖域を完全に守れないことは、国内の農業改革を進める(つまり、多くの非能率な兼業農家を守るのではなく、効率的な専業農家を育てる)いい契機になると考えます。TPPによって、カミカゼが吹いてくるような気がします。

 

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 最近の新聞、雑誌を賑やかす記事に相続増税があります。特に、2015年1月1日以後の相続から適用になる相続税の基礎控除額の縮小(配偶者と子供2名の時の基礎控除額が8,000万円から4,800万円に下がる)と相続税の税率アップ(相続税の最高税率が50%から55%にアップ)により、殆んどすべての日本人が相続税の対象になるかの印象を与える記事が多いです。

 しかし、現状、相続税の申告割合は4%程度ですが、たとえ相続増税後でも、相続税の申告割合は2%アップの6%程度に上昇すると言われています。つまり、相続増税後でも100名の被相続人(死亡した人)の内、6名前後の被相続人(死亡した人)の財産を相続した人は、相続税を支払う必要がありますが、残りの94名前後の被相続人(死亡した人)の相続人は、相続税を支払う必要がないのです。

 相続税対策が必要となるのは、恵まれたごく少数の人々です。大多数の人は、そもそも相続税を払う必要が生じないのです。にもかかわらず、土地を利用した相続税対策を取る人が非常に多いです。更地に賃貸物件を建設すると更地の相続税評価額が2割引になるとか、建物の相続税評価は現金よりも6割引になるとか、借金は相続税を計算する時相続財産から差し引くことができる等々の理由からからです。これらで相続税評価が下がることは事実ですが、評価の本質を理解する必要があります。評価が下がるとは、経済的使用価値が下がることを意味しています。相続税は節約できても、経済的使用価値の下がった財産を子供達に残すことになるのです。子供達が処分する時、二束三文の値段になる可能性を知る必要があります。 

 もっと大事なことがあります。そもそも相続税を払う必要が生じない大多数の人の方が相続でトラブルを起こしていることです。財産がないから相続は関係ないと考えていると大間違いです。「親の心子知らず」のたとえの如く、子供の間での争い(争族)が生じるのです。 

 多くの家庭での財産は、自宅と多少の金融資産になります。このような標準世帯からいちばん争族が生じるのです。その原因は自宅の相続にあります。 

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   争族を回避する最も有効な対策は、生きている時の親と子の対話にあると考えます。対話を通じて、自宅を引き続き所有するのか、売却するのかに対する共通の理解を家族間で得ることです。また、必要に応じて金銭等での生前贈与も検討する必要があります。最後は遺言書を作成することです。被相続人の意思で書かれた遺言書にしたためられた遺産分割割合は、法的に有効となります。ですから「自分が死んだら、全ての財産を愛人に渡す」という極端な遺言書も法的には有効です。しかし、争族を回避する目的としての遺言書にはなりません。争族を回避する最も有効な対策としての遺言書は、親子の共通の理解を反映したものでなければなりません。

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