2014年1月アーカイブ

千倉書房HPにて『「グローバル企業の行き過ぎた節税戦略」を検証する』という連載記事を書いております。当ブログにおいてもその内容を紹介します。

 

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最終ステップの再編ステップ3を説明します。


再編ステップ3

1)会社Cは会社DをD国に設立し、会社Cの無形資産の使用許諾を会社Dに与え、その見返りとして、会社Dは継続的ロイヤルティを会社Cに支払う。

2)会社Dは、その技術を会社Bにサブライセンスする。

 

前回説明したステップ2により、会社Cは会社Aより無形資産を譲りうけています。その結果、会社Cはグループの無形資産保有会社となり、当該無形資産を関係会社にライセンスすることで、ロイヤリティを得る事が可能となります。

そして、会社Cは当該無形資産を会社Bにライセンスします。会社Bのロイヤリティの支払いは、金額的に合理的である限り会社Bで損金算入できる費用となります。金額の合理性は、移転価格税制の下で合理的に算定された価格(独立企業間価格)であるか否かによって判断されます。

更なる税金コストが発生するのであればいかなる税金も追加コストになるので、その節約の施策が必要となります。ここで注目すべきはロイヤリティの送金に対する課税です。通常ロイヤリティの送金は源泉税の対象となります。もしもD国と通じたB国からおよびC国へのロイヤリティの支払いが源泉税の対象とならないのであれば、送金に際して、まったく税負担が発生しません。そこでステップ3、送金に関る源泉税の節約を目的としてD国にある会社Dを利用するプランニングが考えられます。製造・販売をするにあたって必要となる無形資産の使用に基づくロイヤリティの支払いを直接会社Cに支払わないで会社Dを迂回させることで源泉税の支払いを節約することができます。

会社Dを迂回して、送金されたロイヤリティに対してB国の税制では、B国の法律の下設立した会社Cを管理支配する場所が他国にある(本件の場合C国)場合、受け取ったロイヤリティに対してはステップ1で説明した管理支配地基準により課税されません。建前上は、管理支配するC国でロイヤリティは課税されるはずですが、C国はタックスヘイブンで法人税が課されないので、法人税の支払い義務は生じません。この仕組みで会社Cが受け取るロイヤリティに対しては課税されません。

以上の仕組みを組成することで、製造・販売機能を担う会社Bの利益のかなりの部分をほとんど非課税で、会社Cに付け替えることが可能となります。

会社Aが米国企業であった場合、会社Cに留保された利益は米国に送金されるまで課税されない選択をとることが可能です。米国に送金されるまで課税されない選択をとることで、その節税効果は甚大です。

税源浸食タックスプランニングとは上記に述べたような節税プランを想定しています。

『弁護士のための租税法 第3版』が日本経済新聞2014年1月16日朝刊に紹介されました。



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千倉書房HPにて『「グローバル企業の行き過ぎた節税戦略」を検証する』という連載記事を書いております。当ブログにおいてもその内容を紹介します。

 

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次に、再編ステップ2を説明します。


再編ステップ2

1)会社Cは会社Aの無形資産を購入する。

2)会社Aは無形資産売却後従来通り研究開発を続けるが、必要な研究開発費は会社Cが提供する。

 

再編ステップ1によりB国およびC国において税務コストが発生しない組織が組成でき、会社Bの利益を留保する受け皿会社として会社Cが用意されました。そこで、会社Bの利益を会社Cに留保する手段として、ふたつ考えられます。


(1) 会社Bから配当を受け取る

(2) 会社Bで損金算入できる費用(ロイヤリティ)の支払いをさせる


(1)の配当の場合、B国で法人税を払う必要があります。税金を払った残額が配当の対象になりますが、(2)のロイヤリティの支払いは、B国では損金になり法人税負担がありません。そして、いずれの方法によっても、会社CはタックスヘイブンのC国にあることにより所得を認識する必要がないので、税金は発生しません。ですから、税務コストの観点からすれば、会社Bで損金算入できる費用の支払いをする(2)の方が有利です。

税務コストの観点から有利な施策を採用するための方策として、会社Aが所有する知的財産を会社Cに譲渡すれば、会社Cは取得した知的財産を他の関連会社にライセンスすることが可能となり、ロイヤリティを受け取ることが出来ます。会社Aが所有する知的財産を会社Cへ譲渡する取引は、資本関係が50%超の会社の間の取引になるので恣意的な取引価格で行うことが可能となります。もし、恣意的な価格で当該取引が行われると移転価格税制の下で問題となります。移転価格税制上、問題とならない価格設定が大事になります。

2014年1月16日の 日本経済新聞記事 大機小機アップルの租税回避に対応を(クリックすると当該記事が読めます)をご紹介します。

その記事で述べられている「ダブルアイリッシュ・ダッチサンドイッチ」のスキームに興味ある方は、是非、私の連載記事『「グローバル企業の行き過ぎた節税戦略」を検証する』をお読み下さい。今週アップするブログ記事第7回から、第9回までは当該スキームを各ステップ毎に説明しております。


 

千倉書房HPにて『「グローバル企業の行き過ぎた節税戦略」を検証する』という連載記事を書いております。当ブログにおいてもその内容を紹介します。

 

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前回説明した3つの再編ステップのうち、今回は再編ステップ1を詳しく説明します。

再編ステップ1

ステップ1では、会社Cの設立国が非常に大事になります。

法人の課税は、その国の居住者であるか、非居住者であるかで大きく異なります。一般的に、その国の居住者であれば、全世界所得が課税されますが、非居住者であれば、課税の範囲が非常に限定されます。注意する点は、居住者の定義が国によって異なります。法人の場合には、主に次の3つの基準があります。

- 本店所在地によるもの(本店所在地基準)
- 設立準拠法によるもの(設立準拠法基準)
- 事業の管理の場所によるもの(管理支配地基準)


日本の法人税法は、本店所在地基準、設立準拠法基準を採用しています。ですから、本店が日本にあれば、その法人は日本の居住者になります。居住者の判定に管理支配地基準を採用している国は、アイルランド、マレーシア、シンガポール等です。

ステップ1では、会社Cは管理支配地基準をとっているB国の法律の下で設立されていますが、B国でなくC国で経営され管理されているので、C国の居住者になります。ここが節税対策上重要なポイントになっています。本事例では、管理支配地基準を採用している国 を利用することで、会社Cの利益は、B国では課税されないことになります。更に、C国はタックスヘイブン国を前提としているのでC国での課税もありません。税務コストがほとんど発生しない形態が組成されます。

「弁護士のための租税法 第3版」が出版されました。「弁護士のための租税法」は、弁護士 加本亘さんとの共著で、第2版は2010年7月に出版されました。今回、第3版を作成するにあたって考えたことは、2010年以降の税制改正を反映させた単なる改訂版にしないことでした。 

また、本書は、弁護士に限らず、企業法務にたずさわる企業の方々にも有用な本と考えます。 

第3版で注目すべき点は、第3章「租税判例の読み方/弁護士の目線」、第4章「租税判例の事例」、第7章「国際税務等(グループ法人税制、連結納税、組織再編、国際税務)」にあります。 

日々新に組成される経済取引の課税上の取扱いが明確でない場合に、クライアントは弁護士に税務アドバイスを求めることが侭あります。課税上の取扱いが明確でない場合の取扱いを推論するには、過去の判例を知ることが大事です。本書の第3章「租税判例の読み方/弁護士の目線」及び第4章「租税判例の事例」は、ビジネス法を中心に業務を営む弁護士にとっては有用なものと思います。 

次に、外需取込みによる成長戦略あるいは海外現地生産での成長戦略が多くの企業にとって喫緊な課題です。ビジネス法を中心に業務を営む弁護士は、国際化による税の取扱いを知ることは必至です。本書の第7章「国際税務等(グループ法人税制、連結納税、組織再編、国際税務)」は、国際化を進めるクライアントと接することの多い弁護士にとっては有用なものと思います。


表紙 千倉書房.jpg

2014年1月中旬には大型書店で販売されます。また、アマゾン( http://goo.gl/ARFDpu )等のネット書店でも購入できます。 

関連URL:https://www.facebook.com/muratatax

 

Time-out

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年末、安倍首相の突然の靖国参拝があり、それに対して日中関係を懸念する報道が盛んにされています。首相の靖国参拝が日中問題の原因であるかのような論調も見受けられます。しかし、日中問題の原因はもっと根が深いものであることを2013年12月5日に元中華人民共和国大使 丹羽宇一郎氏の講演を聞く機会があり知りました。丹羽氏は、中国と日本の緊張関係の本質を分かり易く解説しました。本ブログ記事は、講演を聞きながら採ったメモを参考にして作成しました。


米国の意識調査会社であるPEWの報告によると、「日本人は中国をどう見ているか?」の質問の回答は“好意的である”が僅か5%で、“そうではない”が95%となりました。“好意的である”が僅か5%と云う数値は当に異常値で、そのような一桁の回答となった国は他に無いそうです(下記に当該PEW報告書を添付しました。ご参照ください。米中対立の一方である米国でさえ37%が好意的です。鳥瞰図的に見ると世界は中国に対して好意的であることは意外でした)。

International Image of China.jpg                                                                                                               出所:PEW RESEARCH CENTER   

日中、共に大嫌い症候群が蔓延しております。それが日中間に大きな緊張をもたらしております。丹羽氏によれば、 (1)40年近く前の尖閣諸島の棚上げ合意の有無に対して、日中の理解に大きなズレがあること、(2)領土問題は存在するとする中国と存在しないとする日本との間に根本的違いがあることが、今の日中の緊張の原点になっているとの見解でした。それでは、この問題は、史実を紐解くことで解決できるのでしょうか?あるいは、話し合いで解決できるのでしょうか?

丹羽氏の答はNOです。不毛な議論が続くだけで、戦争に続く更なる緊張状態になる可能性があるとのことでした。

緊張解決の丹羽氏の答えはTime-out(中断)でした。野球の試合の時、雨が降り出したら、審判はTime-outを宣言します。それと同様に、安倍晋三総理と習近平主席がTime-outを宣言する必要があるとのことでした。

私見ですが、解決不能に近い事態に陥った時、Time-outは生きてゆく上での大事な智慧と考えます。

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