2014年2月アーカイブ

2014年2月15日より17日まで、日経朝刊に連載記事【Taxウオーズ–「改革 法人税」】が掲載されました。その記事を独断と偏見に基づき、抜粋いたしました。

 

法人税率について

  • 「企業に優しい」が売り物の税制には成長企業の視線が集まる。ノルウェー(28%→27%)、デンマーク(25%→24.5%)、ポルトガル(25%→23%)。欧州各国は1月、法人税率を相次ぎ引き下げた。昨年4月、23%に下げた英国も今年4月にはさらに21%に引き下げる。 
  • 欧州で広がる法人税率の引き下げ競争。その背景には「法人税のパラドックス(逆説)」と呼ばれる経験がある。EU統計局によると、EUの法人税率は1995年の平均35.0%から07年の25.5%に下がったが、法人税収は国内総生産(GDP)比で2%から3%へ、逆に増えた。 
  • 各国政府は税率下げで利益を生む成長企業を優遇する一方、旧態依然とした政策減税はやめ、法人税の課税範囲は広げた。

 

優遇措置について

  • 肉用牛売却の免税は47年前、船舶の特別償却は63年前から。優遇措置はいったん導入すると業界の依存が強まり、廃止が難しくなる。「税制が弱者保護に偏れば企業の新陳代謝が失われてしまう」 
  • 無駄な特別措置を打ち切れば、35%台(14年度)と世界でも高い法人実効税率の引き下げに必要な財源が生まれる。10%下げによる税収減(5兆円)をすべて穴埋めするのは難しいが、経済界も痛みを受け入れなければ議論は前に進まない。

 

上記記事が示唆する重要な点は、「法人税率の引き下げ」にあたって、新陳代謝を阻害するような優遇措置は廃止する必要があることです。日本の税制は、“底に幾つもの穴の空いた桶”、すなわち、課税ベースが穴だらけの状態です。年収8,600万円のサラリーマンは3,000万円近い税金を払う必要があります。しかし、同じ年収の肉用牛で生計をたてる畜産農家は、優遇措置により殆んど税金を払う必要がありません。このような穴をふさぐことは、アベノミクスの成長戦略の重要な施策のひとつ「法人税率の引き下げ」以上に重要な成長戦略になると思料します。

会社を変える

| コメント(0)

IBMジャパンの元社長の椎名武雄氏の話を聴く機会がありました。80歳を超えて、なお、矍鑠(かくしゃく)としている椎名氏の姿に感銘しました。椎名氏の話のテーマは、「会社を変える」でした。その内容を掻い摘んで説明します。

 

会社の業績が悪くなる、倒産の危機に瀕することは避けて通れない道である。しかし、会社は生き残らなければならない。そのためには会社は変わらなければならない。会社が変わるとは次に三つである。

  • 新しい目標を立てる
  • 違う仕組みにする
  • 社風を変える


「新しい目標を立てる」、「違う仕組みにする」は、中期経営計画を立案するとか、経営組織を再編するとか、M and Aをするとかして会社の変革はできる。しかし、「社風を変える」はやっかいである。今の若い人には理解できないであろうが、昔の日本のトイレは、水洗でなく、汲み取りであった。汲み取りのトイレに入った時の悪臭には辟易するが、用が済んでトイレを出た時、便所の匂いは全く感じなくなっている。しかし、自分の身体に付いた便所の匂いはトイレに行かない人には漂ってくるのである。社風もそういうものである。ほのかな匂いは快感であるが、強烈な臭いは不快である。「匂い」が「臭い」に変わったら要注意である。しかし、当人は気付かない。だから、社風を変えるのはやっかいである。

 

社風を変えるにはトップを替えることである。IBMが倒産しそうになった時、ルイス・ガースナー[1]がCEOとなったが、彼は優れた経営者として定評はあったが、コンピュターのコの字も知らない外者であった。ガースナーは、IBMの企業文化がどのように形成され、何が今の事業環境において障害になっているかについて観察・分析している。例えば、IBMの文化は、トーマス・ワトソン・シニアがまとめた3つの基本信条:「完全性の追求」、「最善の顧客サービス」、「個人の尊重」、に深く根ざしている。しかし、例えば完全性の追求を例にとれば、それがいつの間にか「完全性へのこだわり」に変化し、窒息しそうな文化と、意思決定の遅さにつながっていた。ガースナーは、こういった水面下の要素にも着目し、どこにメスを入れるべきか検討し、IBMの企業文化を変え、それが、その後のIBM隆盛に結びついている。

 

*****

私見ですが、経営の危機に瀕したIBMに、優れた経営者としての定評はあったがコンピュターのコの字も知らないガースナー氏を選び、経営を付託したIBMの取締役会の先見の明に感服です。



[1]ニューヨーク州ミネオラ出身。1963年、ダートマス大学を卒業後、1965年、ハーバード大学ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得し、米国マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。その後、アメリカン・エキスプレス、RJRナビスコ会長兼最高経営責任者(CEO)を歴任し、1993年4月、IBM初となる外部招請の会長兼最高経営責任者(CEO)に就任した。1991年28億ドルに上る創業初の赤字を計上し、1993年までの3年間で累積赤字総額150億ドルに陥ったIBMを経営再建し、ネットワーク・コンピューティング(1995年)、e-ビジネス(1997年)を提唱した。2002年3月に最高経営責任者(CEO)を退任、同年12月に会長職を退任した。

2月7日の日経夕刊で「ゴルフ会員権値下がり止まらず」が取り上げられています。当該記事を添付しました。ご参照ください。

 

上記記事で述べられている税制の変更ですが、それは2014年度の税制改正大綱に取り上げられた「生活に通常必要でない資産」の範囲の変更に起因しています。

 

「生活に通常必要でない資産」とは従来、競走馬、別荘、貴金属、書画、骨董の類を意味していました。しかし、今回の税制改正で、ゴルフの会員権も「生活に通常必要でない資産」のひとつに加えられました。その結果、従来、ゴルフの会員権の売却に関る譲渡損は所得から控除できましたが、これからは「生活に通常必要でない資産」の譲渡損に該当し、損金に算入できなくなります。

 

この改正は、2014年4月1日以後に行うゴルフの会員権の譲渡損等について適用される予定です。含み損のあるゴルフ会員権を持っている個人は、売り急ぎます。その結果、「ゴルフ会員権値下がり止まらず」の事態になります。

 

それでは、含み益のあるゴルフ会員権を持っている個人は、2014年4月1日以後にゴルフ会員権を売却すれば、譲渡益に課税されないのでしょうか?

 

2014年4月1日以後、譲渡損が損金に算入できないのなら、譲渡益も益金に算入しないのが整合性ある取扱いとおもいますが・・残念ながら、国税は譲渡益を見逃すことはしません。課税します。

千倉書房HPにて『「グローバル企業の行き過ぎた節税戦略」を検証する』という連載記事を書いております。当ブログにおいてもその内容を紹介します。

 

********************************************************************************************************************

 

本ブログで取り上げた税源浸食タックスプランニングの再編ステップ1から3の内容をまとめると次のようになります。


再編ステップ1完結後、会社Cは、C 国で経営され管理されています。C国はタックスヘイブン国ですので、法人所得税は課しません。また、B国は、会社Cに法人所得税は課しません。なぜなら、会社Cは、B国の法律の下で設立されていますが、主としてC国で経営され管理されているため、B国では非居住者となります。したがって、会社Cが受取るロイヤリティ収入は、課税されることがありません。

再編ステップ2完結後、会社Cは、会社Aが所有していた無形資産を譲渡により取得しました。無形資産の利用に対する対価を他の者に求めることが可能となります。

再編ステップ3で示された如く、会社Bは、B国での製造・販売に数千人の人々を雇用しています。そして、B国は、会社Bの課税所得に法人所得税を課します。しかしながら、移転価格税制の求める独立企業間価格で算定されたロイヤルティ料率に基づき、会社Bは会社Dにロイヤリティ支払をした結果、会社Bの課税利益をわずかにすることが出来ました。

更に、再編ステップ3の下、会社BによりD国にある会社Dになされるロイヤリティの支払いには、B国での源泉徴収税は課せられません。D国は、会社Dの課税所得に法人所得税を課します。しかしながら、課税所得からは、会社Dによって会社Cに支払われたロイヤリティが控除されます。会社Dは、会社Bと異なり、重要な機能を担っていないですし、無形資産も所有していません。更に、重要な事業上のリスクも殆ど負っていません。それゆえに、会社Dでは極めて僅かの所得しか計上されません。D国は、その国内法の下でロイヤリティの支払に源泉徴収税を課さないことになっています。したがって、会社Dによって会社Cになされたロイヤリティの支払は、D国の源泉徴収の適用を受けません。

以上の再編ステップが完結した後、完成形は次の通りです。

 

上記の税源浸食タックスプランニングは、人・物・カネを移すことなく、カネの移動だけで達成が可能となります。このようなカネだけを移す節税対策(その手段として事業再編の手法を利用する)に対して、OECD加盟国は懸念を示しています。

税源浸食タックスプランニングの構成は、多くの場合、次の4つの要素で成り立っています。

  • 海外事業を行う国での課税を出来るだけ少なくすること
  • 利益の送金に際して課される源泉税を出来るだけ少なくすること、あるいはゼロにすること
  • 利益を留保する国での法人課税を出来るだけ少なくすること、あるいはゼロにすること
  • 海外に留保した利益に対して、親会社での課税がないこと

 

本連載記事で取り上げた税源浸食タックスプランニングは、BEPSレポートの中にある例示の解説をしたものです。OECDは次のように述べています。

「BEPSレポートの中にある例示は、多くのグローバル企業が採用したタックスプランニングを要約しているものである。それらは関係するそれぞれの国々の税制の下では、すべて完全に合法的であるように思われる・・が、これら例示の分析から、問題にすべき重点項目の洗い出しのために有用な理論的枠組みが構築できるかも知れない。」

 

私見ですが、人・物・カネを移す事業再編において、結果として節税効果が大きい組織再編をグローバル企業が実施した場合、ある程度止むを得ないと考えます。問題は、カネのみを移す事業再編の手法を利用した常識外れの節税効果を持つタックスプランニングと考えます。

これから税源浸食タックスプランニングに対する各国の対応が検討されます。租税法律主義が税務の大原則です。ですから、合法的であることが大事でした。しかし、合法的であることでグローバル取引に対する税務行政が上手く機能するのでしょうか?BEPSレポートを読むと、新たなパラダイムが必要なようです。国際税務での新たなパラダイムのキィワードは、“常識外れ”ではないかと考えます。 【完】


最近のコメント

アーカイブ

Powered by Movable Type 6.0.3