「グローバル企業の行き過ぎた節税戦略」を検証する その10(最終回)

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千倉書房HPにて『「グローバル企業の行き過ぎた節税戦略」を検証する』という連載記事を書いております。当ブログにおいてもその内容を紹介します。

 

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本ブログで取り上げた税源浸食タックスプランニングの再編ステップ1から3の内容をまとめると次のようになります。


再編ステップ1完結後、会社Cは、C 国で経営され管理されています。C国はタックスヘイブン国ですので、法人所得税は課しません。また、B国は、会社Cに法人所得税は課しません。なぜなら、会社Cは、B国の法律の下で設立されていますが、主としてC国で経営され管理されているため、B国では非居住者となります。したがって、会社Cが受取るロイヤリティ収入は、課税されることがありません。

再編ステップ2完結後、会社Cは、会社Aが所有していた無形資産を譲渡により取得しました。無形資産の利用に対する対価を他の者に求めることが可能となります。

再編ステップ3で示された如く、会社Bは、B国での製造・販売に数千人の人々を雇用しています。そして、B国は、会社Bの課税所得に法人所得税を課します。しかしながら、移転価格税制の求める独立企業間価格で算定されたロイヤルティ料率に基づき、会社Bは会社Dにロイヤリティ支払をした結果、会社Bの課税利益をわずかにすることが出来ました。

更に、再編ステップ3の下、会社BによりD国にある会社Dになされるロイヤリティの支払いには、B国での源泉徴収税は課せられません。D国は、会社Dの課税所得に法人所得税を課します。しかしながら、課税所得からは、会社Dによって会社Cに支払われたロイヤリティが控除されます。会社Dは、会社Bと異なり、重要な機能を担っていないですし、無形資産も所有していません。更に、重要な事業上のリスクも殆ど負っていません。それゆえに、会社Dでは極めて僅かの所得しか計上されません。D国は、その国内法の下でロイヤリティの支払に源泉徴収税を課さないことになっています。したがって、会社Dによって会社Cになされたロイヤリティの支払は、D国の源泉徴収の適用を受けません。

以上の再編ステップが完結した後、完成形は次の通りです。

 

上記の税源浸食タックスプランニングは、人・物・カネを移すことなく、カネの移動だけで達成が可能となります。このようなカネだけを移す節税対策(その手段として事業再編の手法を利用する)に対して、OECD加盟国は懸念を示しています。

税源浸食タックスプランニングの構成は、多くの場合、次の4つの要素で成り立っています。

  • 海外事業を行う国での課税を出来るだけ少なくすること
  • 利益の送金に際して課される源泉税を出来るだけ少なくすること、あるいはゼロにすること
  • 利益を留保する国での法人課税を出来るだけ少なくすること、あるいはゼロにすること
  • 海外に留保した利益に対して、親会社での課税がないこと

 

本連載記事で取り上げた税源浸食タックスプランニングは、BEPSレポートの中にある例示の解説をしたものです。OECDは次のように述べています。

「BEPSレポートの中にある例示は、多くのグローバル企業が採用したタックスプランニングを要約しているものである。それらは関係するそれぞれの国々の税制の下では、すべて完全に合法的であるように思われる・・が、これら例示の分析から、問題にすべき重点項目の洗い出しのために有用な理論的枠組みが構築できるかも知れない。」

 

私見ですが、人・物・カネを移す事業再編において、結果として節税効果が大きい組織再編をグローバル企業が実施した場合、ある程度止むを得ないと考えます。問題は、カネのみを移す事業再編の手法を利用した常識外れの節税効果を持つタックスプランニングと考えます。

これから税源浸食タックスプランニングに対する各国の対応が検討されます。租税法律主義が税務の大原則です。ですから、合法的であることが大事でした。しかし、合法的であることでグローバル取引に対する税務行政が上手く機能するのでしょうか?BEPSレポートを読むと、新たなパラダイムが必要なようです。国際税務での新たなパラダイムのキィワードは、“常識外れ”ではないかと考えます。 【完】


コメント(2)

村田先生 このたびは「行き過ぎた節税戦略」の丁寧かつ明快な解説を頂きま
して、有難うございました。村田先生には、この「行き過ぎ」へ効果的に対応
できる税制のご提案をお願いするとともに、心から期待しております。小生も
村田先生の解説とご意見を伺いながら、稚拙な試案を考え、愚見を述べさせて
頂きますので、ご批判賜りますれば幸いです。
村田先生は、新たなパラダイムは「常識外れ」なものになるだろうと予想され
ていますが、現状の実務面・効率面に配慮すると、次のような意外に「常識的
な」ものになるかと思われます。つまり、グローバル企業には「全世界所得に
適正な課税を!」という当たり前のものです。

(1案)グローバル企業の全世界所得(持分法による)に対して、自国(注)
    税率を適用し課税する。当該所得に係る外国税額は控除する。
    (注)この場合、自国とは本店所在地基準・設立準拠法基準を基本と
       するが、タックスヘイブンへの本店所在地や設立準拠法の形式
       的移転を阻止するため、管理支配地基準による実態判断も採用
       することとする。
    これは、日本政府独自の税制改正により可能であると思われます。
    これによれば、タックスヘイブンを利用するインセンティブが働かな
    くなることが期待できます。
    また、海外移転で生き残る場合でも、国内での雇用喪失等を償うべく
    納税することによって、「愛国心」発露の仕組みとなることも期待で
    きます。(設例のベトナムでは25%、38%との差13%は日本へ)
    安倍首相の求める「愛国心」に因み、本税制を「愛国税制」と称す。

(2案)グローバル企業の全世界所得を各国に按分(例えば、損金額で)して、
    各国所得に対して、各国税率を適用し課税する。
    これは、各国政府の意思と税制の統一が必要となるので、OECD等
    が目指す方向となるにしても、長い年月を要すると思われる。
    なお、この段階では、税率の統一も志向されるかも知れない。

                                 以上

企業としては節税は当然考えることではありますが、弊社のような零細企業ではなかなかできない手法です。グローバルで大きな企業がこのようなことで大節税を行っているとすると公平な競争にはなりません。ますます収益力に差が出てきます。
しかし国の行政姿勢にも及ぶことですので簡単ではありませんね。やったもん勝ちみたいですが致し方ないとも言えます。まあ、節税した分を社会にどれだけ還元するかを考えてもらいたいです。これが莫大な役員報酬に代わるとすれば許せないですが・・

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