2014年3月アーカイブ

いよいよ消費税が8%になります。消費増税を契機にこれから議論される問題が食料品等に対する軽減税率の導入の可否についてです。この問題の結論は、2014年12月までに出す予定になっています。食料品等に対する軽減税率の導入の可否の検討は、非常に大事と考えます。そこで、「食料品等に対する軽減税率の導入問題」について税務大学校研究部教授 高田具視氏が税大論叢(ろんそう)46号(2004年6月30日発行)に書いた記事は、大変興味ある内容です。この記事の一部を引用しながらこの問題の議論を進めます。


食料品等に対する軽減税率は、食料品等の譲渡に該当する場合に適用されますが、飲食サービス(役務の提供)に該当する場合には適用されないという点に関して意見の相違は見られません。つまり、外食に対して、食料品等に対する軽減税率は適用されないことを意味しています。しかし、ライフスタイルの変化が著しい今日、内食に加えて、外食、中食が色々な形で家庭に入り込んでいます。そうなると、食料品等の譲渡に該当するか、飲食サービス(役務の提供)の判定が非常に難しくなります。

ここに、高田具視氏のコメントを引用いたします。


食料品に対する軽減税率は、逆進性の緩和を目的として政策的に実施するものであることから、レストラン等における飲食まで軽減税率の対象に含める必要性は乏しく、また適当でもないと考えられる。-中略- ただ、現実に行われる食料品に関する取引が、食料品の譲渡に該当するか、 飲食サービス(役務の提供)に該当するかを判定することは簡単ではない例も多いであろう 。

この問題では、よくファースト・フード店でのハンバーガーの販売が例に出される。店内飲食(イートイン)は飲食サービスで、持ち帰り(テイクアウト)は食料品の譲渡となるが、こうしたイートインとテイクアウトの双方に共通して提供される食料品の販売については、客が現実に店内で食べるかどうかを売却時に判断することは不可能であるため、両者の間で消費税の適用税率が異なることとなれば、その区分は客の申請に基づかざるを得ないこととなろう。そうすると、誰もが税負担の少ない方を望んでテイクアウトと言って購入することは容易に想像され、適正な課税は困難となる。

こうした飲食料品の譲渡か飲食サービスかの区分は、個々の取引において様々な考え方ができ、悩ましい判断を求められるであろう。例えば、

  • 上記のハンバーガーの販売でも、マグドナルドのドライブスルーでの販売のように、明らかに持ち帰りを前提とした販売は、(食料品等の)譲渡に該当するのではないか、
  • レストラン等からの持ち帰り品でも、予め包装された持ち帰り専用品やみやげ用としての特に注文した食品などは、(食料品等の)譲渡になるのではないか、
  • 立食いそばや立飲みコーヒー、屋台のラーメンなどは、飲食サービスとならざるを得ないのか、その場合、高価な弁当や惣菜などとの間の負担のアンバランスは割り切らざるを得ないのか、
  • 列車のビュッフェは飲食サービスになるとしても、そこで販売される弁当やコーヒーは(食料品等の)譲渡になるのか、
  • ビアガーデン等における売り子によるつまみ販売はどうか(その場で消費することが前提で持ち帰ることは想定しにくい)、
  • 相撲茶屋における弁当、つまみ等の提供は(食料品等の)譲渡でいいのか、
  • セルフ調理施設(電子レンジ等)や簡単なテーブル等を有するコンビニエンスストアなどにおける弁当などの販売も、(食料品等の)譲渡ということで問題はないか、
  • いわゆる出前や仕出しは、飲食サービスか、
  • 宅配ピザ、コンビニなどによるおせちや弁当の配達などはどのように考えるべきか、

等々、事例には事欠かない。

 

上記のような取引に対して、財務省は、税収の観点から限りなく食料品等の譲渡の範囲を狭くするよう働きかけるでしょう。しかし、政治家は、大衆からのブーイングを恐れて食料品等の譲渡の範囲を限りなく広くするよう働きかけるでしょう。食料品等に対する軽減税率を強く求める野党政治家、マスコミの力に押されて食料品等の譲渡の範囲は限りなく広くなるように思われます。しかし、食料品に対する軽減税率は、その目的とする貧困層の逆進性の緩和のみならず、富裕層にも恩恵が及ぶことは留意すべきことです。そして、食料品等の譲渡の範囲を限りなく広くすることは、穴の空いた桶を作るに等しい行為です。

 

私見ですが、問題ある食料品に対する軽減税率の導入より、低所得者に現金を支給する方がベターと考えます。当面は、住民税の非課税世帯を対象に1人当たり1万円を支給する方法、2016年1月から社会保障・税番号制度(マイナンバー)が導入されます。不正受給を制限するために、この制度を利用することは妥当と考えます。低所得者に現金を支給する方法は、恩恵を必要としない富裕層は対象外になり、マイナンバーでの不正受給の制限により、公正な社会作りに資すると思います。

日経の経済教室「法人税改革の視点(上)税率下げで税収増は可能---伊藤元重東京大学教授」の記事の中で私の興味を引いた部分を引用します。


【欧州の国では、法人税率を大幅に引き下げながら、他方で付加価値税率(日本の消費税率にあたる)を上げてきた。企業活動を通じて大きな付加価値を生み出し、そして付加価値税のような形で薄く広く税を集めるのが合理的と考えたのだろう。世界で突出して高齢化が進む日本でこそ、そうした思考が必要だ。どこで付加価値を生み出すのか、そしてどのような形で社会保障の財源を確保するのかを考えれば、法人税率を下げ、付加価値税率を上げていくという方向が正しいと思える。】

⇒(村田コメント)

伊藤教授が文末で言っている「・・法人税率を下げ、付加価値税率を上げていくという方向が正しいと思える」と言う部分に「所得税率を下げ」を挿入したいです。これから少子高齢化がより進む日本において、大事なことは国民全体が応分の税負担をすることです。所得を基準にする税体系では、勤労世代に税が課され、高齢者には税が課されません。それでは、これからの日本を背負う(就業前の子供も含めた)世代にペナルティーを課すようなものです。消費税は当に消費を基準にしていますので国民全体が応分の負担をすることが可能となります。

 

【ある経営者が日本の法人税を「ガラパゴス」と呼んでいた。「ガラパゴス」という言葉は日本の「ガラパゴス携帯電話」を連想させることが多い。世界の流れとは完全にかけ離れ、グローバルに通用しなくなっている製品という意味である。日本の技術が劣っているわけではない。企業がまじめに取り組んでこなかったわけではない。むしろその逆で、目先のローカルな論理で一生懸命取り組んだ結果がガラパゴス現象なのである。目先の税収、法人税と消費税についての明らかに間違った俗説など、目先のことに懸命に対応する中で、いつのまにかグローバルな常識とはかけ離れた税率になっていたのかもしれない。】

⇒(村田コメント)

伊藤教授が言っている「日本の税制はガラパ化している」に賛同します。キャッチコピー的に言えば“ガラケ税制さようなら!スマホ税制こんにちは”ですね。

 

"生命(いのち)は温かい"

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愛犬「モモ」は 12歳で毛がたくさんあるシェットランド・シープドッグです。(“シェルティ”と呼ばれています。) 毎朝、毎晩、彼と散歩をするのが私の日課でした。過去形で表現するには理由があります。モモがちょっとビッコを引くように歩き、そして痛みが日に日に増している様子が見えたので動物病院で検査したら右前足に肉腫ができていることが判明しました。組織検査の結果は残念な結果でした。右前足を切断する手術でしたが、モモは元気になりました。ただ不自由な身体になったので、今までの散歩は出来なくなりました。

 

モモと一緒にいると、本当に"生命(いのち)は温かい"ということが実感できます。モモが甘えて、時々私にダッコをおねだりします。ダッコするとフサフサした毛に覆われた彼は本当に温かいのです。そんな温かいという感触は、毎日散歩に連れていくだけでは、餌を朝夕二回定期的に与えるだけでは得られません。


普段の対人関係も「俺はやるべき事はやっている」と自分を正当化していますが、実は犬を散歩に連れていくだけ、餌を朝夕二回定期的に与えるだけと五十歩百歩かもしれません。温もりは体感しないと感じられないものです。もしかすると、温もりは、体感させてもらうものかも知れません。


モモが天に召される日はそう遠くはないでしょうが、自分の生命が燃え尽きるまで、モモは私に温もりを体感させてくれるでしょう。うれしいです。そして、つらいです。

集団的自衛権について

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安倍首相が強い関心をしめしている「集団的自衛権」について、マスコミ報道だけでは良く判りません。そこで、「集団的自衛権」について調べました。これは私の自習ノートです。


*****


  • 国連憲章が規定する国連の公用語は中国語、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語の5カ国語とアラビア語である。日本語は公用語に含まれていない。
  • 「国連憲章」とはThe Charter of the United Nationsで、「集団的自衛権」は「Collective self-defence」のことである。
  • 「集団的自衛権」は国連憲章第51条に規定されている。公用語による国連憲章第51条を読むことが大事である。英語の国連憲章第51条を読んでみる。
  • 英語の国連憲章第51条は以下の通りである。

Article 51 Nothing in the present Charter shall impair the inherent right of individual or collective self-defence if an armed attack occurs against a Member of the United Nations, until the Security Council has taken measures necessary to maintain international peace and security. Measures taken by Members in the exercise of this right of self-defence shall be immediately reported to the Security Council and shall not in any way affect the authority and responsibility of the Security Council under the present Charter to take at any time such action as it deems necessary in order to maintain or restore international peace and security.

参考のため、国際連合広報センターが開示している国連憲章第51条の翻訳を見てみる。

国連憲章第51条 この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。

⇒(村田ノート1国連憲章第51条を原文に忠実に翻訳すると下記のようになる。赤字の部分が加筆すべき部分!

国連憲章第51条 この憲章のいかなる規定も、ある国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国の国々がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。

 

  • 個別的自衛権行使のための要件

(1)相手国の攻撃が差し迫ったものであり他に選択の余地や時間がないという「必要性」と、(2)選択された措置が自衛措置としての限度内のものでなければならないという「均衡性」が行使するための条件とされる。(「集団的自衛権」について、ウィキペディアより)

  • 集団的自衛権行使のための要件

集団的自衛権行使のためには上記のような個別的自衛権行使のための要件に加えて、(3)武力攻撃を受けた国がその旨を表明することと、(4)攻撃を受けた国が第三国に対して援助要請をすることが行使するための条件とされる。(「集団的自衛権」について、ウィキペディアより)

⇒(村田ノート2集団的自衛権行使が攻撃を受けていない第三国の権利である以上、実際に集団的自衛権を行使するかどうかは各国の自由であるが、援助要請について悩ましい問題が生じる。次の設例は、集団的自衛権行使のための要件を満たしていると考える。

(A)尖閣諸島を航行中の米国の艦船が中国の攻撃をうけ、米国が日本に対して援助要請をしてきた。

(B)北朝鮮の攻撃を受けた韓国が日本に対して援助要請をしてきた。

(C)イスラエルの攻撃を受けたイランが日本に対して援助要請をしてきた。

集団的自衛権行使の時の判断基準が悩ましい。私見であるが、日本自身が個別的自衛権を行使すべき事態が予想されるか否かで判断することが至当と考える。

 

  • 国連憲章は、1945年6月26日調印、同年10月24日発効。日本国憲法は、1946年11月3日公布。日本の国連参加は1956年12月18日。日本の国連参加の時点で、国連憲章第51条は既に存在した。よって、集団的自衛権は新たな問題ではない。また、日本が国連に参加した時点で、集団的自衛権は日本に与えられたことは明白である。

⇒(村田ノート3国際法の観点から、日本は集団的自衛権を保持している。それでは、国連憲章と憲法どちらが優先するのか?通説は、国内の法律より国際法(国連憲章を含む)が優先し、憲法は国際法より優先するようだ。しかし、国連憲章等の条約に関して、国内の法律より条約が優先し、更に、条約は憲法より優先するという説もあった。どちらの説が文理解釈、論理解釈の観点から妥当なのか?

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