2015年2月アーカイブ

トマ・ピケティ氏の「21世紀の資本」の本の核心は、次の不等式 r>g が成り立つことを実証的分析から説明したことです。不等式は、資本収益率(r)が経済成長率(g)を常に上回っていることを意味しています。つまり、富める者(主に金融資産を持つ者)がますます富むことになります。このフレーズを引用して格差の議論が再燃しています。格差の議論では、ピケティ氏の「トップ10%はだいたい国富の60%以上を所有している」という富の集中を想定しています。しかし、皮膚感官として「そんな格差が日本にあるのか?」と感じます。

そこで公表されているデータから定量的分析をしました。その結果、「ピケティ氏の考える格差は日本に存在しないです。むしろ、日本は、不等式 r>g が成り立つ純金融資産を保有する世帯層(「プラス層」と呼びます)とその不等式の埒外にある世帯層、つまり純金融資産がほとんどない世帯層(「マイナス層」と呼びます)の二層社会です。

野村総合研究所によると預貯金や株式、投資信託の資産から負債を差し引いた純金融資産が5億円を超える世帯の保有する純金融資産の合計は73兆円です。それは、全金融資産1,286兆円のわずか6%です。ビックリするような大金持ちは日本には居ないことをしめしています。

2015 二層社会 4.jpg次に純金融資産3,000万円未満の世帯の平均純金融資産の額は約1,300万円(=539兆円÷4,182万世帯)になります。つまり、どんな家庭でも貯蓄が約1,300万円あることになります。しかし、この数値は現実離れしています。そこで、「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯調査)」2014年を参考にしました。「家計の金融行動に関する世論調査」は日本銀行情報サービス局が事務局となって行っている調査です。調査は統計的手法を用いていますのです、サンプルとして選ばれた標本の結果をもって母集団(全世帯)を推定することは合理的と考えます。

「家計の金融行動に関する世論調査」によると、世帯の金融資産保有額の中央値は400万円でした。その意味することは、全世帯の半数(中央値まで)の金融資産保有額は400万円以下であることを意味しています。全世帯5,200万所帯(野村総合研究所による数値を利用)の半数2,600万所帯の金融資産保有額は400万円以下であると推定できます。その推定は"当たらずとも雖も遠からず"と考えます。

金融資産保有額は400万円を境にして、それ以上の層を「プラス層」とし、それ以下の層を「マイナス層」とすると二層化された日本社会が見えてきます。

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ふたつの表から、日本の世帯の半数は、金融資産を持たないその日暮らしの生活をしていることが明かです。

野村総合研究所による資料から判ることは、「プラス層」の中で金融資産保有をいちばん多く保有しているのは、富裕層ではなく、ミドルクラスの層です。富裕層と貧困層とを対比させる格差の議論は、日本では的外れです。実効ある政策のためには、「プラス層」の持つ金融資産、特にミドルクラスの財布に手を突っ込む必要があります。

私見ですが、そうするには、先ず、歳出にみられる穴の空いた桶状態を脱する必要があります。そのためには垂れ流しをストップさせるような財政規律の立て直しが必要です。

次に、重要なことはマイナス層は必ずしも貧困層を意味していません。年収10百万円の家庭でも上記仕分けの下では、マイナス層に入る家庭は少なくないと推測します。金融資産を持たなくても幸せな暮らしができる社会が理想です。ですから、社会のセーフティネットが完備していれば、「マイナス層」が増えていくことは好ましい傾向と考えます。

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