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2007年12月14日

税務事例(財経詳報社発行)1月号記事

私の記事「裁判における争点の検討と移転価格課税の現状の検討」が税務事例(財経詳報社発行)1月号に掲載されました。

 

移転価格の分野においては、裁量主義的課税が横行しています。そのような由々しき現状を打開するには、移転価格税制(租税特別措置法66条の4)の文理解釈を吟味する必要があります。税法の文理解釈の深化は、裁判での議論およびその議論の結果なされる裁判所の判断によって達成できるものと考えます。そこで、税務訴訟で判決の出ている移転価格案件を分析しました。その分析結果を移転価格課税の現状と対比して「裁判における争点の検討と移転価格課税の現状の検討」という記事に認めました。ご興味があれば税務事例(財経詳報社発行)1月号をご一読下さい。

2006年11月17日

売上原価の損金算入時期

公認会計士の本年度の租税法の論文式試験で次の問題が出ました。

[問題1] 法人税法上の損金に関する以下の問いに答えなさい。
[問1] 法人税法22条に定める損金計上時期の判定基準について論じなさい。
[問2] 宅地開発業を営むA社は、B県内の林野を購入し、造成のうえ宅地として販売することを企図した。B県知事は、この宅地造成に許可を与えたが、これと共に、宅地造成地域周辺の道路整備・雨水排水路の改修工事を行うよう指導した。A社は、許可対象地域を宅地造成のうえ販売し、その収益を平成17事業年度(平成17年4月1日から平成18年3月31日までの事業年度をいう。)の益金に算入した。また、宅地造成地域周辺の道路整備等の工事については、平成17年5月に、C建設会社から1億5,000万円の工事費見積額の連絡を受け、同社との間で請負契約を締結した。その後、道路整備等の工事に対しては、環境の悪化を懸念する付近住民からの反対があり、B県において、住民の意向を踏まえて地域整備計画の一部変更を検討することとなったため、A社の平成17事業年度中には、この工事は実施されなかった。以上の事実関係に基づき、A社は、工事費見積額1億5,000万円を平成17事業年度の損益に算入することができるか。理由を明示して答えなさい。

上記問題[問1]の回答の手掛かりは、9月1日付け本ブログ記事「損金」(カテゴリー”租税法解説”)にあります。ご一読下さい。
当該公認会計士試験問題で興味を引いたのは[問2]です。それは売上原価の損金算入について債務確定基準が適用されるのか否かを問うているからです。課税庁が一番問題にするのが債務の確定です。債務が確定していない費用(売上原価、販売費、一般管理費)は、損金算入出来ないと多くの実務家は考えています。しかし、条文上は売上原価と販売費、一般管理費の取り扱いは異なります。売上原価の取り扱いを規定する条文が法人税22条3項1号です。しかし、当該条文には債務確定基準の明文規定がありません。債務確定基準の明文規定があるのは法人税22条3項2号の販売費、一般管理費の取り扱いにおいてです。当該1号及び2号は下記の通りです。ご参照下さい。

法22③「内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。
1  当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額
2  前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く)の額

債務が確定していない工事費用を売上原価に計上し、損金性を否認された納税者が争った事件があります。当該事件において、最高裁は「このような事情のある場合には、当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が確定していないときであっても、見積金額を法人税22条3項1号にいう当該事業年度の収益に係る売上原価として当該事業年度の損金に算入できると解するが相当である」と結論付け、納税者勝利の判決を下しました。この判決から判断すると、法人税22条3項1号の文理解釈は、売上原価の損金算入時期は債務が確定した時ではなく、公正妥当な会計処理の基準により費用として計上することが求められる時と解します。また、最高裁の判決で「このような事情のある場合には、・・・」と述べていることは、重要な意味があります。その意味は事実関係に照らして売上原価の損金算入時期が決まるということです。安易な見積金額では売上原価の損金算入が出来ないことを最高裁は、意見表明したと解します。

2006年5月 8日

非上場株式の低廉譲渡と新株の有利発行における時価

非上場株式の低廉譲渡と新株の有利発行における時価を算定するにあたって、その会社の所有する資産の含み益に対して将来発生する法人税額等相当額を控除出来るか否かが争われた事件を取り上げます。この事件の最高裁判決(昨年11月)は納税者の勝訴、つまり当該時価を算定するにあたって法人税額等相当額を控除することが認められた事件です。

今回の判例解釈を通達の運用という観点から述べてみます。相続においての評価通達では、非上場株式の時価を算定するにあたって、その会社の所有する資産の含み益に対して将来発生する法人税額等相当額を控除出来ることが明記されています。当該評価通達を所得税の計算において利用したことが更正の理由となり、この更正の理由が争点となった事件でした。一般的に合理性があるとして実務で定着していた取扱い(法人税額等相当額を控除)を、原処分庁は、評価通達が対象とする相続税とは税目が異なることを理由に更正しました。この争点に対して最高裁が判断を下したのが今回の判決です。ここで留意すべき点として、平成12年に改正された法人税、所得税の基本通達があります。平成12年基本通達では、非上場会社の株式の時価を算定するにあたって、会社の所有する資産の含み益に対して将来発生する法人税額等相当額を控除することを認めていません。本事案が平成12年基本通達以前の取引に係わるので、これから同様な取引を行う場合、法人税額等相当額を控除した時価は認められないとの評釈記事がありますが、これは租税法律主義を理解した人の書いた評釈とは思えません。今回の判決は平成12年基本通達の適否に判断を下していないだけで、平成12年基本通達を裁判所が認めた訳ではありません。

時価とは社会通念上相当と認められる価額であって、法人税法を例にとれば、時価算定方法を法定していません。社会通念上合理的である価額である限り、納税者の算定した価額を時価と認めるべきです。通達は前回の租税法解説の法源で議論した通り、租税法律主義の下における法源を構成していません。しかしながら、課税当局は俗にいう通達行政で事案を進めようとします。つまり、平成12年基本通達を錦の御旗にして、平成12年基本通達と異なる方法で時価を算定した納税者の非上場株式の価額は、有利発行(平成12年基本通達で算定された価額と納税者の算定した価額の差)したとして課税するでしょう。課税の蓋然性を恐れて、納税者が真の時価とは異なる平成12年基本通達価額を使用している事態が散見される現状を筆者は懸念しております。あるべき通達行政に関して含蓄ある内容の文章が本ブログにコメントされた投稿者の中にありましたので引用させてもらいます。
「法人税基本通達の制定について」(法人税法基本通達の前文)では、次のように記されております。「この通達の具体的な運用に当たっては、法令の規定の趣旨、制度の背景のみならず条理、社会通念をも勘案しつつ、個々の具体的事案に妥当する処理を図るように努められたい。いやしくも、通達の規定中の部分的字句について形式的解釈に固執し、全体の趣旨から逸脱した運用を行ったり、通達中に例示がないとか通達に規定されていないとかの理由だけで法令の規定の趣旨や社会通念等に即しない解釈におちいったりすることのないように留意されたい」の部分を引用させてもらいました。


2006年4月26日

最高裁判決ー税理士不正巡り追徴取り消す

税理士が税務署員と結託し、勝手に虚偽申告したのに、納税者本人に重加算税(35%)を追徴したのは不当として、東京都大田区の男性が課税処分取り消しを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第三小法廷は25日、過少申告加算税分の課税を認めた二審東京高裁判決を破棄、処分を取り消した。
浜田邦夫裁判長は判決理由で「税務署員が積極的に不正にかかわった極めて特殊な事情があり、加算税を課すのは酷だ」との判断を示した。(2006/04/26, 日本経済新聞 朝刊)