0040税務訴訟の最近のブログ記事
私の記事「アドビ事件―裁判所が判断を下さなかったシークレットコンパラブルについて」が税務事例(財経詳報社発行)
3月号(クリックすると当該記事が読めます)に掲載されました。
移転価格の調査においては、問題となるシークレットコンパラブルの使用について私見を述べています。ご興味があれば添付した税務事例(財経詳報社発行)3月号をご一読下さい。
TDKの移転価格処分取消が報道されました。当に、不当な移転価格課税に対する国税への警鐘です。当該報道に関するブログ記事を書きました。
2010年2月3日の日経新聞、朝刊に「TDKの移転価格課税、141億円取り消し 国税不服審判所」という見出しの記事が載りました。当該記事を引用いたします。
TDKが海外子会社との取引を巡る「移転価格税制」に基づき、2005年6月に東京国税局から約213億円の申告漏れを指摘され、東京国税不服審判所に取り消しを求める審査請求を出していた問題で、不服審判所が約141億円の処分を取り消したことが(2010年2月)2日、分かった。地方税や還付加算金を含め約94億円が還付される見込み。TDKが同日発表した。
TDKは07年6月、同国税局への異議申し立てで約30億円が取り消され、約16億円が還付されている。不服審判所の取り消しで還付額は計約110億円に上る。国税不服審判所が多額の処分を取り消した例としては、日興コーディアルグループの子会社が04年に、債券販売に絡んで追徴課税されたことについての審査請求で、翌年、追徴税約99億円が取り消されるなどしている。
本件は、裁量主義的移転価格課税(不当な課税)がされたと聞いております。更に213億円の申告漏れが指摘された事業年度は、1999年3月期と2000年3月期とも聞いています。つまり、不服審判所の裁決から課税年度へ遡ると当に10年以上かかっています。不当な課税であれば、過ちは速やかに改めるべきですが、税務調査への対応に2から3年、救済に5年という納税者に非常に重い負担が課されたことは大変由々しきことです。いずれにしても、不服審判所が多額の処分を取り消したことは、画期的であり評価に値する裁定と解します。
TDK「移転価格」処分取り消し
という翌日の記事(2010年2月4日の日経新聞、朝刊)を参考のため添付します。当該記事の末尾に私のコメントが載っています。ご一読下さい。
税務訴訟までいった移転価格税制による更正案件であるアドビ事件を税理士の視点より検討した私と藤澤税理士の論文(クリックすると当該論文が読めます)が雑誌NBL(2009.11.1)に掲載されました。
アドビ事件とは、アドビシステムズ株式会社(アドビ社)と同社の国外関連者との取引が問題にされた事件です。
アドビ社は,コンピューターソフトの販売支援,マーケッティング,製品サポート事業を業とする内国法人です。アドビ社の親会社は、PDFソフトの開発・製品の販売を業とする外国法人であります。本更正事案は、アドビ社の所得が国外関連取引を通じて海外へ移転されたとして東京国税局により更正された移転価格事案です。この更正に対して、アドビ社は賦課決定の取消を求め、平成20年10月30日、東京高裁第16民事部(宗宮英俊裁判長)は、東京国税局のした独立企業間価格の算定方法は合理的な方法とはいえないとして、課税処分を取り消しました。東京国税局が上告を断念しましたので納税者勝訴が確定した税務訴訟事件です。この事件について税理士の視点より検討いたしました。
私の記事「裁判における争点の検討と移転価格課税の現状の検討」が税務事例(財経詳報社発行)1月号に掲載されました。
非上場株式の低廉譲渡と新株の有利発行における時価を算定するにあたって、その会社の所有する資産の含み益に対して将来発生する法人税額等相当額を控除出来るか否かが争われた事件を取り上げます。この事件の最高裁判決(昨年11月)は納税者の勝訴、つまり当該時価を算定するにあたって法人税額等相当額を控除することが認められた事件です。
今回の判例解釈を通達の運用という観点から述べてみます。相続においての評価通達では、非上場株式の時価を算定するにあたって、その会社の所有する資産の含み益に対して将来発生する法人税額等相当額を控除出来ることが明記されています。当該評価通達を所得税の計算において利用したことが更正の理由となり、この更正の理由が争点となった事件でした。一般的に合理性があるとして実務で定着していた取扱い(法人税額等相当額を控除)を、原処分庁は、評価通達が対象とする相続税とは税目が異なることを理由に更正しました。この争点に対して最高裁が判断を下したのが今回の判決です。ここで留意すべき点として、平成12年に改正された法人税、所得税の基本通達があります。平成12年基本通達では、非上場会社の株式の時価を算定するにあたって、会社の所有する資産の含み益に対して将来発生する法人税額等相当額を控除することを認めていません。本事案が平成12年基本通達以前の取引に係わるので、これから同様な取引を行う場合、法人税額等相当額を控除した時価は認められないとの評釈記事がありますが、これは租税法律主義を理解した人の書いた評釈とは思えません。今回の判決は平成12年基本通達の適否に判断を下していないだけで、平成12年基本通達を裁判所が認めた訳ではありません。
時価とは社会通念上相当と認められる価額であって、法人税法を例にとれば、時価算定方法を法定していません。社会通念上合理的である価額である限り、納税者の算定した価額を時価と認めるべきです。通達は前回の租税法解説の法源で議論した通り、租税法律主義の下における法源を構成していません。しかしながら、課税当局は俗にいう通達行政で事案を進めようとします。つまり、平成12年基本通達を錦の御旗にして、平成12年基本通達と異なる方法で時価を算定した納税者の非上場株式の価額は、有利発行(平成12年基本通達で算定された価額と納税者の算定した価額の差)したとして課税するでしょう。課税の蓋然性を恐れて、納税者が真の時価とは異なる平成12年基本通達価額を使用している事態が散見される現状を筆者は懸念しております。あるべき通達行政に関して含蓄ある内容の文章が本ブログにコメントされた投稿者の中にありましたので引用させてもらいます。
「法人税基本通達の制定について」(法人税法基本通達の前文)では、次のように記されております。「この通達の具体的な運用に当たっては、法令の規定の趣旨、制度の背景のみならず条理、社会通念をも勘案しつつ、個々の具体的事案に妥当する処理を図るように努められたい。いやしくも、通達の規定中の部分的字句について形式的解釈に固執し、全体の趣旨から逸脱した運用を行ったり、通達中に例示がないとか通達に規定されていないとかの理由だけで法令の規定の趣旨や社会通念等に即しない解釈におちいったりすることのないように留意されたい」の部分を引用させてもらいました。

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